Research Abstract |
学校現場で,児童・思春期の人たちの心理的問題についての課題を解決する一つの方法として,彼ら・彼女らのメンタルヘルスリテラシー(メンタルヘルスに関する知識,理解,態度)を高める試みは重要ではないかと考える。彼ら・彼女らが心理的問題に早期に気づいたり,支援を活用する力を適切につけることは,生涯にわたり自身のメンタルヘルスを保持・増進した生活を営む上でも有用だと思われる。しかしながらこれまでは,児童・思春期のメンタルヘルスに関する一般化できる情報は乏しく,諸外国との比較可能性をもつ大規模調査は行われてこなかった。 そこで本研究では,豪州で開発された「National Survey of Mental Health Literacy in Young People」を日本語版調査票として開発したもの「若者のメンタルヘルスリテラシー調査票」(吉岡・中根:2010)を活用して,児童・思春期のメンタルヘルスリテラシーをはかり,その結果を国際比較し,日本の学校現場におけるメンタルヘルスに関する普及啓発等心理教育的支援を探ることを目的とした。 研究計画1年目は,研究協力の同意が得られた高等学校(高校生312名)を対象に,調査を実施した。結果,(1)事例の認識については事例の種別を問わず10%台であったこと,(2)支援を求めにくい要因として,支援を求めることに対する恥ずかしさや心配があげられたこと,(3)支援者として,専門家以外に,家族・友人の割合が高かったこと,(4)メンタルヘルスに関する新しい情報について,学校で見聞きしていなかったこと,などが明らかになった。 調査実施前には,調査協力校と複数回打ち合わせを行った。打ち合わせは,管理職,学年主任,養護教諭,スクール・カウンセラーで行った。また調査後は,学校の希望に応じてメンタルヘルスに関する講演を行った。 以上より,若者のメンタルヘルスリテラシーを高める試みが求められること,またそのためには学校全体への働きかけが必要であることが示唆された。
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