2010 Fiscal Year Annual Research Report
動作系列の記憶構造と学習および実行時の視覚的手がかりに関する心理学的研究
Project/Area Number |
22530787
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森田 ひろみ 筑波大学, 大学院・図書館情報メディア研究科, 講師 (00359580)
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Keywords | 実験心理学 / 手続き記憶 / 連続運動学習 |
Research Abstract |
我々の日常生活は、記憶にある運動系列から、状況に即したものを選択し、適切なタイミングとパラメータで実行することにより成り立っている。課題研究の目的は、運動系列の記憶と視覚情報の関係を調べることである。初年度は、運動系列記憶の基本単位の形成に対する視覚的手がかりの影響について調べた。 実験1では、4×5構成で連続ボタン押し系列の学習を行った(4行4列からなるボタン配列中の4個のボタンが点灯するので、これらを押す順序を試行錯誤により学習する。これを5セット分積み重ねて合計20回のボタン押し順序を学習する)ところ、学習中期から一定のボタン押しタイミング(4ボタンからなるセットのうち、第1ボタン押し時間が長く、第2ボタン押し時間から第4ボタン押し時間はそれより短く一定)が現れた。この結果は、4個のボタン押しがひとまとまりの記憶単位として学習され、セットの点灯により一度に想起されることを示す。 実験2では、実験1で学習した連続ボタン押し系列を、ボタンの点灯無しに再学習したところ、75%以上の割合で再学習可能であり、点灯しないボタンを次々に押す中で、第1番目、第5番目、第9番目…のボタン押し時間が長く、それ以外のボタン押し時間は一様に短いというタイミングが現れた。この結果から、原学習で形成されたリズムが、想起時にボタン配置パターンを与えなくても現れることがわかる。 以上の実験から、4×5構成の連続ボタン押し系列学習において、4個のボタン押しが基本単位(チャンク)となることが示唆される。また、チャンク形成に、視覚的手がかり(ボタン点灯)が大きく影響し、想起の際に視覚的手がかりが無くてもこのチャンク構造に従って実行されることが示された。研究結果は、単純な連続運動の記憶構造を、学習の際の視覚的手がかりの与え方により制御可能であることを意味し、スポーツや楽器演奏の練習方法に脳科学的な根拠を与えることにつながる。
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