2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530788
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
實森 正子 千葉大学, 文学部, 教授 (80127662)
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Keywords | 比較認知心理学 / 認知心理学 / 視覚的注意 / 進化 / 動物認知 |
Research Abstract |
前年度は、人の顔画像を合成して作成したカテゴリ事例を標的刺激とし、標的刺激を非カテゴリ事例(妨害刺激)の中から探索する課題をハトに訓練した。組織的に計画された複数のテストを実施した結果、1)ハトはカテゴリ探索課題を容易に学習できる、2)カテゴリの新奇事例への転移が生じる、3)訓練に用いなかった新奇事例に対する探索効率は典型性に従って高くなる、などが明らかになった。これらの結果は、カテゴリ学習に基づくtop-down処理がハトのような動物においても生じ、柔軟かつ効率的なカテゴリ探索が可能なことを示唆している。23年度は、こうしたtop_down処理特性を詳細に検討するために、以下の2つの実験を行った。 実験1では、カテゴリ事例(標的刺激)を非カテゴリ事例(妨害刺激)の中から探索する課題(カテゴリ探索)とその逆の課題(非カテゴリ探索)を連続逆転した。こうした連続逆転学習はハトでは困難なことが予想されたが、カテゴリ刺激を用いた本実験では容易に連続逆転を学習し、ハトはきわめて柔軟に注意焦点を切り替えられることが明らかになった。また、2つの課題における探索時間を比較したところ、妨害刺激数にかかわらず探索時間は非カテゴリ探索の方で短いという探索非対称性が得られた。実験2では、top-down処理によるプライミング効果を検討するために、2つの重複しないカテゴリを標的にした。各試行ではいずれか一方のカテゴリ事例を標的刺激とし、非カテゴリ刺激を妨害刺激とする訓練を行った。複数カテゴリが標的になるため予想以上に訓練を必要としたが、ハトにも複数カテゴリの探索を学習できることが示された。こうした成果に基づいて、系列プライミングのテストを計画した。また、関連する研究を論文として発表し、前年度の成果は英語論文にまとめて査読付きの海外学術誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた2つの実験のうち、実験1は予定通り実施され、カテゴリ探索における非対称性が初めてハトのような動物でも見出された。実験2は2つのカテゴリを標的とする探索課題を、実験経験の無いハトを用いて行った。これまでの課題と比べて課題そのものが難しかったため、ハトの訓練に予想以上の時間がかかったが、ハトにも学習可能なことが示され、当初の計画どおりに研究を実施できることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1では、妨害刺激として用いたカテゴリ事例の中から標的刺激である非カテゴリ事例を探索するときの方が、その逆の場合より探索時間が短いという探索非対称性が見出された。この非対称性がどのような探索要因に起因しているのかを今後明らかにしてゆく。一方、実験2で用いた新しい探索課題がハトに学習可能であることが明らかになったので、今後は当初の計画どおり、系列プライミングのパラダイムを導入して、カテゴリ探索にけるtop-down処理について検討する。.
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