Research Abstract |
前年度は, カテゴリ事例を標的刺激, 非カテゴリ事例を妨害刺激とするカテゴリ探索課題において十分な訓練を受けたハトに対して, 標的刺激と妨害刺激を逆転する非カテゴリ探索課題を新たに訓練した。その結果, 後者の条件で探索効率が高い探索非対称性が示唆された。平成24年度は, 探索非対称性がどのような要因に由来するかを詳細に検討するために, 実験経験のないハトからなるカテゴリ探索群と非カテゴリ探索群の2群を用い, 実験経験を厳密に統制した上で群間比較をした。 テスト1では, 妨害刺激数を数段階に変化して得られた探索効率と正答率を2群で比較した。その結果, カテゴリ探索群では, カテゴリ事例間で相関の高い刺激特性(カテゴリ特性)に基づいた探索が行われていることが確認された。一方, 非カテゴリ探索群は, “カテゴリ特性をもたない刺激”を探索しているのではなく, 複数の非カテゴリ事例の個々について探索を学習していることが判明したが, 探索はむしろカテゴリ探索群より速かった。 テスト2では, カテゴリ事例の典型性を変化した。カテゴリ探索群の探索効率は標的刺激の典型性が減少するに従って低下したが, 非カテゴリ探索群では妨害刺激の典型性にかかわらず, 極めて効率的な探索が生じた。また, テストを継続して行うと, 練習効果によってカテゴリ探索群の探索時間は短縮したが, それでもなお非カテゴリ探索群の探索の方が有意に速かった。 これらの結果から, 非カテゴリ探索群(妨害刺激が相互に類似性のあるカテゴリ刺激)が示した効率的で速い探索は, 連続する試行における妨害刺激間の類似性を背景とする探索文脈において, 標的刺激として用いられた非カテゴリ事例の顕著性が対比的に高くなったためであることが明らかになった。平成24年度の成果はすでに英語論文としてまとめた。 近日中に海外学術誌に投稿する予定である。
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