Research Abstract |
平成23年度では,まず,昨年より行ってきた予備実験の結果のまとめを行った。予備実験では,2光点を空間的に離れた位置に提示して,ベータ運動が観察される条件下でのMEGの計測を行った。その結果,ベータ運動観察時のMEGの事象関連磁場には,一次視覚野における顕著な活動電流が認められ,その活動のピークが時間の経過と共に頭頂葉方向へと移動することが示唆された。すなわち,一次視覚野から,いわゆる空間視経路にいたる脳領域の賦活が示唆された。 次に,この結果を踏まえ,ベータ運動を観察させる条件として,(1)2光点の点滅刺激が1つの光点移動として明瞭に知覚される最適時相,(2)2光点がほぼ同時に知覚される同時時相,および,(3)2光点が時間的に明確に分離し,継時的に知覚される継時時相,という3条件を設定し,これらの条件下でMEGデータを取得した。その結果,ベータ運動の印象が最も明瞭に得られる最適時相条件では,光点刺激提示後の事象関連磁場によって推定された活動源の電流量ピークが,後頭部V1領域からMT野方向へと両側性に伝播する様子を再度確認することができた。さらに,この最適時相条件では,活動電流量の賦活が刺激提示後100 msから立ち上がり,この賦活は200 ms後には頭頂,中心,側頭葉方向に伝播していくことが示唆された。一方,同時条件や継時条件では,このような傾向が明確には認められなかった。最適時相条件においてのみ認められたこの活動源の電流量変動は,明瞭な運動印象に伴い生起したものと考えられ,“運動”に対応する成分であることが示唆された。
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