2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳磁図による運動視知覚に関わる物体視経路と空間視経路の機能評価
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22530792
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
今井 章 信州大学, 人文学部, 教授 (80211754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内川 義則 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90147455)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脳磁図(MEG) / 運動視 / 仮現運動 |
Research Abstract |
平成24年度では,仮現運動の一つであるベータ運動を観察させる条件として,刺激の形が変化する事態,および,色が変化する事態における予備的検討,さらに両眼視差を利用した三次元的立体視が可能な刺激の提示方法についての予備的検討を行った。 これまでに行った成果から,(1)単純なベータ運動観察下では,運動印象が最も明瞭に得られる最適条件で,頭頂部から中心部にかけて増大したMEG応答が惹起され,この活動が運動知覚に関連する活動と推定される,(2)最適な運動が知覚される条件では,“運動”に関与する成分が刺激提示後100 msから立ち上がる,(3)このMEG信号の応答は,刺激の形を変化させた場合,基本的には大きな影響は受けないが大脳半球間に活動差が生ずる可能性がある,および(4)形の変化を伴う条件では,側頭部領域においても最適条件での増大するMEG信号が認められる,ということが明らかにされた。これらの成果は,昨年の日本視覚学会2013年冬季大会(今井章・高瀬弘樹・田中慶太・内川義則 (2013). 脳磁図によるベータ運動の検討─形の変化による電源活動─ Vision, 25, 54-55.)において発表された。 また,刺激の色を変化させた事態における予備的検討では,基本的に形を変化させた条件と同様なMEG活動が認められたものの,“運動”に関与する成分の立ち上がりが刺激提示後100 msよりも速いことが示された。このことから,形の変化に伴う運動知覚よりも色の変化に伴う運動知覚の成立がより速いことが示唆される。この点については,さらにデータを積み重ねて検討する必要がある。この色の変化による結果は,今年度の日本生体磁気学会,およびThe 36th European Conference on Visual Perception 2013 (ECVP2013)などにおいて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京電機大学先端工学研究所におけるMEG装置の稼働が順調なことに加え,ほぼ当初の予定通りに実験が実施できていること,またデータ解析も順調である。 平成22年度にスタートした本研究は,22年度に仮現運動についての基礎的な2つの実験を行った。 平成23年度には,実際運動との比較データを取得し,形の変化による仮現運動の実験の一部が行われた。 平成24年度には,形の変化を伴う実験データの追加と,色の変化による仮現運動の実験の一部が行われた。加えて,立体視が可能な刺激についての予備的検討を行った。 これまでの成果は学会などで報告されてきており当面,予想される問題点もないことから,本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ,本研究の推進について特段の遅れは生じていない。実験を実際に実施する東京電機大学先端工学研究所では,これまで通りの実験が行える予定であり,当該大学での倫理委員会の承認もすでに得られている。したがって,引き続き平成24年度までと同様な手順で実験が遂行できる見通しである。 本年度は本研究課題の最終年度にあたり,3次元立体視が可能な刺激を提示して,刺激の3D表示が運動印象に与える影響を探る。すでに,前年度の予備的検討において刺激の3D提示が実現できていることから,本年度の研究が予定通り進められる見込みである。
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