2011 Fiscal Year Annual Research Report
顔知覚のしくみの解明:顔錯視と知覚学習からの多面的アプローチ
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22530795
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森川 和則 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70312436)
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Keywords | 知覚 / 顔 / 錯視 / 倒立顔 / 単純接触効果 |
Research Abstract |
人間による顔知覚のしくみを解明するため、顔錯視と知覚学習の両方の観点から実験を行なった。まず、錯視研究の方法を顔知覚に応用した実験研究を複数行った。研究1では私たちが新たに発見した顔の錯視である「Head Size Illusion」について実験で詳しく測定した。その結果、顔の下半分(目から下)が肥っている場合、顔の上半分(目から上)も大きく見えることが判明した。この錯視は顔を倒立させると激減することから、錯視量の少なくとも50%は顔特有の現象であることが判明した。なお、この「Head Size Illusion」は米国のVision Sciences Societyの世界錯視コンテストにおいてトップ10に入選している。 研究2では知覚学習の観点から、倒立した顔を長年見慣れることにより倒立顔の知覚が向上するかどうかを検討した。顔を反対方向から見慣れている職業人として歯科医師(臨床経験10年以上)に実験参加者になってもらい、統制群としては大学生を用いた。実験の結果、歯科医師に倒立顔再認課題でアドバンテージは見られなかった。このことは、顔知覚のメカニズムが生得的ないし発達初期に完成して、成人後の経験(知覚学習)の影響を受けないことを意味している。すなわち、顔知覚は一般物体の知覚の熟達化とは異なることが示唆された。 さらに研究3でも知覚学習の観点から、顔を用いた単純接触効果が、学習済みの顔から作られた未学習の平均顔にも般化するかどうかを検討した。その結果、自人種の顔(日本人)では般化が見られたが、他人種(インド人)の顔では般化が見られずフォールスアラーム率も高かった。この結果は、顔の偶発学習でも意図的学習でも同じであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数々の実験を行ない興味深い知見を得ている。倒立顔を見慣れている職業人として歯科医師に実験参加してもらうなど、独創的なアイディアの実験を遂行した。また、新しい顔錯視を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に進展しているので、来年度もこの方向を推進する。来年度はさらに化粧の錯視効果の実験も行いたい。顔錯視と顔の知覚学習の両方の観点からの知見を総合して、顔知覚メカニズムの解明を行ないたい。論文の雑誌への投稿も進めたい。
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