2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530797
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮谷 真人 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90200188)
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Keywords | 表情 / 反応制御 / No-Go電位 |
Research Abstract |
本研究の目的は,反応制御の過程を反映する事象関連電位(ERP)成分を用いて,ポジティブあるいはネガティブな感情価を持つ表情刺激に対する反応の特異性を明らかにすることである。平成22年度は,fMRIを用いた脳イメージング研究で報告されたような非感情的Go/No-Go課題と感情的Go/No-Go課題における脳活動の違いがERPにも反映されるのか,反映されるとしたらどのような違いとして出現するかを調べることを目的として,2つの実験を実施した。実験1では,文字刺激(SとH)を用いたGo/No-Go課題と表情刺激(笑顔と怒り顔)を用いたGo/No-Go課題を実施中の成人からNo-Go電位を記録した。その結果,No-Go電位の出現の仕方が文字課題と表情課題で異なり,文字課題ではどちらの文字を反応ターゲットにしてもNo-Go電位に違いはなかったが,表情課題では,怒り顔反応時には文字課題と同程度のNo-Go電位が観察されたのに対し,笑顔反応時にはNo-Go電位は出現しなかった。実験2では,実験1で得られたNo-Go電位の相違が刺激の質的違いによるものか,反応時間の長短に基づくものかを調べるために,(1)妨害刺激の性質,(2)刺激として用いる人物の数,(3)刺激の符号化の難易度の3要因を操作し,反応時間の長短による表情刺激に対するNo-Go電位の違いについて検討した。その結果,反応時間の延長にNo-Go電位の振幅低下が伴う場合があることが確認された。以上のことから,非感情的刺激に対する反応抑制と感情的刺激に対する反応抑制の違いをERPで捉え得る可能性は示されたが,明確な結論を出すためには,同一の刺激を用いて2つの過程を比較するなど,さらに工夫が必要である。
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