2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530797
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮谷 真人 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90200188)
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Keywords | 表情 / 反応制御 / No-Go電位 |
Research Abstract |
表情の有無による反応抑制過程の違いを,事象関連電位(ERPのNo-Go電位)を指標として検討した。平成23年度には5つの実験を行い,以下の知見を得た。 1.笑顔と真顔,あるいは怒り顔と真顔を組み合わせたGo/No-Go課題を実行中の成人からERPを記録したところ,笑顔あるいは怒り顔に対するNo-Go電位は,真顔に対するものより小さかった。しかし,統計的信頼性は確認できなかった。笑顔と怒り顔を組み合わせた課題では,表情によるNo-Go電位の違いはなかった。 2.笑顔と真顔を組み合わせたNo-Go課題で,参加者が反応ボタンを押すと刺激が大きくなり,ボタンを押さないと刺激が小さくなるようにして,反応と刺激の接近-回避を対応づけたところ,笑顔に対するNo-Go電位が,真顔に対するものよりも統計的に有意に小さくなった。 3.反応と刺激の接近-回避の対応が表情によるNo-Go電位の違いに影響するかどうかを調べるために,接近-回避がある条件とない条件で上記2.のNo-Go課題を実施したところ,表情によるNo-Go電位の振幅差は,接近-回避がある条件だけで観察された。 4.表情以外の刺激でも刺激の感情価によってNo-Go電位に違いがあるかどうかを調べるため,IAPS(国際標準感情刺激)の中から選んだポジティブ刺激と中性的刺激を組み合わせてNo-Go課題を実施したところ,刺激の感情価によるNo-Go電位の違いはなかった。 5.表情によるNo-Go電位の違いの有無が,顔刺激のどの側面に注目するかに依存するかどうかを調べたところ,刺激が笑顔か真顔かを判断する課題では,笑顔に対するNo-Go電位が,真顔に対するものよりも統計的に有意に小さくなったが,男性か女性かを判断する課題では,そのような違いはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた3つの大きな研究目標の内,2つに対応するデータを得た。残りの1つについても現在準備を進めており,平成24年度に重点的に取り組むことによって,成果が得られる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
表情に含まれる感情情報が反応制御に及ぼす影響については順調に研究が進展しているが,視線と反応制御に関する研究の準備が遅れているので,平成24年度は後者に重点をおいて作業を進める予定である。また,データは蓄積されてきているが,その理論化が十分とは言えないので,関連領域の研究者とさらに議論を深めたい。
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