2010 Fiscal Year Annual Research Report
文脈からの逸脱刺激に惹起される注意のメカニズム:事象関連脳電位を指標とした検討
Project/Area Number |
22530802
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
片山 順一 関西学院大学, 文学部, 教授 (80211845)
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Keywords | 注意 / 注意の捕捉 / 事象関連脳電位(ERP) / P300 |
Research Abstract |
われわれヒトを含む生物は環境の変化に対して非常に敏感であり,予期しない変化に対して強制的に注意が引きつけられる.環境の変化は危険信号や重要な情報を含むことが多く,これは環境に適応するために不可欠なメカニズムである.本研究の目的は,こういった環境の予期しない変化,すなわち文脈からの逸脱刺激に対する注意のメカニズムを明らかにすることである. 視覚3刺激オッドボール課題では,同一の刺激(高頻度標準刺激,例えば大きい丸)を1~2秒間隔で反復呈示する系列中に,低頻度でこれとは異なる刺激(標的刺激,例えば小さい丸)をランダムに混入し,これの検出・ボタン押しを求める.この標的刺激に対するERPにはP300(P3b)と呼ばれる能動的注意あるいは作業記憶活動を反映するERP成分が出現する.標的に加えて,低頻度で別の刺激(逸脱刺激)を混入すると,その刺激のタイプによって異なったP300が出現する.例えば,その刺激が受動的な注意の捕捉を生じるとP3bよりも前頭部に分布する新奇P3(P3a)が出現する.他方,逸脱刺激が課題関連刺激として処理されると,頭頂部優勢な小さなP3bが出現する. また,研究代表者はこれまでに,中心部での課題が困難になると,周辺に呈示される逸脱刺激に対する注意捕捉が減衰する(P3a振幅が減衰する)ことを示してきた.本年度は,課題の難易度と周辺に呈示した情動刺激への注意捕捉との関連を予備的に検討した.その結果,逸脱刺激により惹起されるP3は難易度が上昇しても減衰せず,情動刺激は高難易度下でも注意を捕捉することが示された.また,不快逸脱刺激に対するP3は快刺激よりも後方に分布し,不快刺激は課題関連情報として処理された可能性が示唆された.
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