Research Abstract |
われわれヒトを含む生物は環境の変化に対して非常に敏感であり,予期しない変化に対して強制的に注意が引きつけられる.環境の変化は危険信号や重要な情報を含むことが多く,これは環境に適応するために不可欠なメカニズムである.本研究の目的は,こういった環境の予期しない変化,すなわち文脈からの逸脱刺激に対する注意のメカニズムを明らかにすることである. 本年度は,低頻度逸脱事象に対する注意の時間的な推移について調べるため,視覚3刺激オッドボール課題遂行中の事象関連脳電位(ERP)を検討した.特に,非標的刺激に対するERP P300について,標的-標的間での非標的刺激の呈示位置に着目した分析を行った. 画面中央に標準刺激(青円,80%),標的刺激(小さな青円,5%),非標的刺激(標準刺激に加えその左右に赤い四角形,15%)のいずれかを,持続時間120ms,SOA1.2sでランダム順に呈示した(360刺激×4ブロック).被験者には標的刺激に対して出来るだけ早く右手親指でボタン押しすることを求めた.標的刺激は典型的な標的P300,すなわち頭頂部優勢なP3bを惹起した.また,非標的刺激は典型的な非標的P300,すなわち刺激後300-500ms付近に中心部優勢な頂点を持つ大きな陽性電位を惹起した.この非標的P300は標的呈示後,より時間を置いて呈示される時に,大きくなる傾向が示された.すなわち,標的刺激提示後,12個目までの間に呈示された時よりも,13個目以降に呈示された非標的P300振幅が大きかった. この結果は,標的が呈示された後,次の標的が呈示されることに対する期待の高まりが非標的P3振幅に反映されていることを示していると考えられる.
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