Research Abstract |
自由再生における環境的文脈依存効果については未解決の問題点が多数存在する。本研究代表者らは様々な環境情報(場所,コンピュータディスプレイの背景色,BGM,匂い)が,自由再生にどのように影響するかを実験研究によって調べてきた。そして,それらの環境情報の機能の相互類似点,相違点を明らかにしてきた。さらに,単独の環境情報の効果ばかりでなく,環境情報を組み合わせた複合環境的文脈の効果や,文脈依存効果の成否を調べるため,学習時と自由再生テスト時の文脈が同じ条件(same context,SC条件)と異なる条件(different context,DC条件)の再生成績を比較してきた。この場合,SC条件の方がDC条件よりも好成績を示すと,文脈依存効果が生じたとする。さらに,文脈間の比較を行う際に,文脈依存効果が生じるか否かだけではなく,項目強度の規定因(学習時間,反復回数など)によって,文脈依存効果サイズがどのように変化するかを調べてきた。また,項目を時系列ではなく,空間配置した時に,それぞれの文脈で,文脈依存効果が生じるか否かを調べてきた。 本年度は視覚情報と聴覚情報の複合文脈を操作して自由再生の文脈依存効果の実験を行った。 これまで,文脈は,視覚情報,聴覚情報,嗅覚情報等が単独に操作されるのが一般的であった。ところが,ビデオ文脈では視覚情報,聴覚情報を一緒に操作することができる。Smith & Manzano(2010)は,世界で初めてビデオ文脈を操作することによって自由再生実験を行い,文脈依存記憶の検出に成功した。ただし,彼らの手続き(特に,教示)にはいくつかの問題点が含まれている。そこで,本研究では,Smith & Manzano(2010)とは異なる教示による実験を2つ行い,ビデオ文脈依存効果を調べた。また,この環境的文脈(ビデオ文脈)をこれまで行ってきた複合場所文脈,BGM文脈,背景色文脈,匂い文脈等との相互の相違点を比較した。 この成果は,学会発表を経て,論文化の準備に入っている。
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