2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァイマル期ドイツにおける消費社会の進展と家庭教育に関する社会史的研究
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22530813
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (50221958)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 家庭教育 / ヴァイマル期 / ドイツ / 幼児教育 / 社会史 |
Research Abstract |
H24年度は、H23年度にまとめた研究成果を踏まえて、家庭教育と幼児教育の接点に関する研究をすすめた。これについては、H24年12月8日にジェンダー史学会において、「20世紀前半のドイツにおける家庭教育の展開――1920年全国学校会議に焦点をあてて」というタイトルで口頭発表をおこなった。本報告では、幼児教育における家族の位置づけが明らかにした。 報告では、1920年のドイツ全国学校会議の第一委員会「幼稚園」の議事録の分析から、第一に、幼稚園は経済的な問題ないしは、母親が無知なために家庭での教育が不十分である場合の補完という福祉施設であること、第二に、教育の権利と義務は家庭にあり、幼稚園を義務化してしまうと家庭の権利の侵害になること、第三に、幼稚園は学校の準備教育の場ではないこと、第四に、家庭教育が十分でないという問題解決のためには、女子が母親になるための教育を充実させるべきであることが、議論されたことを示した。ここで幼児教育サイドの委員たちは、家族を最優先し子育てを女性の役割とみなし、そこから幼稚園のもつ学校とは異なる独自性を主張したが、こういった議論自体が幼稚園を教育ではなく福祉の問題へと移行させることとなった。結果的に、当時行われていた幼稚園教師を学校教師と同じ地位に位置づけようとする運動は頓挫し、女性たちの職業としての幼稚園教師は学校教師よりも低い身分の職業として制度的に位置づけられることとなった。 さらに、3月に資料調査のためにライプツィヒの国立図書館におとずれ、ヴァイマル期の雑誌に関する資料調査をおこなった。平成24年度には、この成果を踏まえて、全体の総まとめに当たる論文をまとめていく予定にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、本研究の研究成果は、比較家族史学会編『比較家族史研究』(2010)に論文「少子化,ナショナリズム,ジェンダー-1910年代のドイツにおける出生率低下問題から-」を、家族社会学会編『家族社会学研究』(2010)に論文「<教育と家族>研究の展開―近代的子ども観・近代家族・近代教育の再考を軸として」を、日本教育社会学会編『教育社会学研究』(2011)に論文「幼児教育をめぐるポリティクス-国民国家・階層・ジェンダー-」を、以上、三つの学会誌の掲載論文の中にその成果を公表してきており、また、小玉亮子・広井多鶴子共著『現代の親子問題』(日本図書センター、2010)、對馬達雄編『ドイツ 過去の克服と人間形成』(昭和堂、2011)、石川照子・高橋裕子編『家族と教育』(明石書店、2011)の三冊のなかに、論文を寄稿してきた。 また、2012年度には、ジェンダー史学会で「20世紀前半のドイツにおける家庭教育の展開――1920年全国学校会議に焦点をあてて」学会発表をおこなってきた。 以上のような学会発表、学会誌や書籍等での研究成果の公表をさらに引き続き続けながら、今年度本科研のまとめを行っていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集の結果のまとめを引き続き行う必要があると考えているので、特に今年度前半でその作業を行いたいと考えている。加えて、研究当初は、家庭教育に重点をおいてすすめてきたが、研究をすすめるなかで、家庭教育と幼児教育の接点で分析することの重要性があきらかになってきた。そのため、当初よりもより幼児教育にも重点を置いた研究として進展してきた。このこのとは、重要であると思われるため引き続き家庭教育と幼児教育の接点での議論を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)