2012 Fiscal Year Annual Research Report
異文化をつないだ日・米の支援者たち―朝鮮人女子留学生への支援の形態に着目して
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22530815
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
太田 孝子 岐阜大学, 留学生センター, 教授 (00293580)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 異文化理解 / 留学生支援 / 内鮮融和 |
Research Abstract |
I.関屋貞三郎(朝鮮総督府初代学務局長)に関して収集した資料から以下のことが判明した。 ①関屋貞三郎は併合直後の1910年10月に学務局長就任し、主導的立場で「朝鮮教育令」や各学校規則の制定、「私立学校規則」の改正に関与したが、諸規則の中に(1)歴史、風俗習慣、特に経済力を考慮しなくては教育効果は挙がらない、(2)教育勅語の遵守といっても内地と同様にはいかず、直ちに義務制度を施行することはできないので、「時勢」と「民度」の発達に応じて段階的に実行していくべきである、(3)国語は国民精神の宿るところであり教育の基礎をなすものである、等々の教育観を反映させた。関屋が規則制定に及ぼした具体的影響を把握した。 ②国会図書館憲政資料室に所蔵されている「関屋貞三郎関係文書」2,225点には、朝鮮に関係する文書は極めて少なく、中でも朝鮮から内地へ留学した女子学生の支援に関する言及は皆無であった。しかし、関屋自身は朝鮮人に対して関心を持ち続け、(1)内地で勉強する朝鮮人学生への支援や、(2)キリスト教を通じて朝鮮人との交流を持った。(1)は、学務局の小使だった少年を東京の自宅に住まわせ、大学入学から就職まで面倒を見た。(2)に関しては、クリスチャンだった妻衣子の影響が大きい。衣子は教会では朝鮮人と礼拝を共にし、自宅を開放して家庭集会を開き、朝鮮の人々の相談に乗り、苦難を分かち合ったと言われ、その影響で関屋貞三郎も交流を持った。内鮮融和に心を砕いていた寺内総督も、衣子夫人の姿勢を評価し励ましの言葉をかけている。 II.柳原吉兵衛が発行していた①「向上」(No.1~No.37)、②「櫻槿の華」(No.1~No.7)を入手することができたため、柳原が朝鮮人女子留学生に対する支援だけでなく、卒業し朝鮮で教員となった人々を対象に、計3回に及ぶ「朝鮮女子教員内地視察」を実施していたことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
柳原吉兵衛に関する研究では、調査の途中で予想していなかった資料が収集できたため、朝鮮人女子留学生に対する支援だけでなく、内地の女子高等師範学校・専門学校等を卒業後、朝鮮で教員となった人々に対する支援も行っていたことが判明、当初の計画以上に研究が進展した。関屋貞三郎・衣子、モリス夫人、東京YWCA内の支援者に関する研究では、多くの資料を収集し解読・分析してはいるが、期待する内容に言及した資料が少なく、さらなる資料収集の必要性に迫られているものの、全体的にはおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年なので、以下に示す調査を追加の上、論文にまとめる。 1)柳原吉兵衛が3回にわたり実施した「朝鮮女子教員内地視察」の実態を解明する。 2)アメリカへ留学した日本人女性を支援した人々に関する文献の解読・分析を継続して行う。「フィラデルフィア委員会」の調査を深め、奨学金受給者の選考方法、受給者との関係等、実態の把握に努める。 3)東京YWCAの刊行物を精読し、「朝鮮女子学生寄宿舎」に関与した日本側の人物に関する資料を収集する。
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Research Products
(2 results)