2011 Fiscal Year Annual Research Report
オールタナティヴ教育における「稽古」の思想と「宗教性・精神性」の教育人間学的解明
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22530818
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西平 直 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90228205)
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Keywords | 稽古 / 宗教性 / オールタナティヴ教育 / 教育人間学 / ホリスティック教育 / ブータン / シュタイナー教育 |
Research Abstract |
オールタナティヴ教育を「稽古」の思想の視点から検討する中で「宗教性・精神性」の問題を考察する本研究の第二年度の成果は以下の通りである。 1、「京田辺シュタイナー学校」において申請者自身がエポック授業を行い、生徒たちと親密な関係を築き、子どもの視点から見た機能について詳細な聞き取りを行った。この継続的な作業の中で、シュタイナー教育というオールタナティヴ教育における「書くこと」の意味がますます明確になった。 2、海外におけるフィールド調査としては、昨年に引き続き、ブータン国への調査を行った。オールタナティヴな近代を目指すこの国において、近代学校の制度がいかなる意味をもつのか、その中で、宗教性・精神性がいかなる形で考慮されているのか。今後も調査を継続する予定である。 3、文献研究としては「無心の思想」をめぐる思想研究が進んでおり、その成果は今年(あるいは来年)中に岩波書店から出版される予定である。また、ライフサイクルの総合的研究にも着手しており、宗教性・精神性の問題をライフサイクルの視点から検討する作業を行っている。数年かかるプロジェクトであるため成果はまだ出ていないが、既に出版社との打ち合わせもできており、出版に向けて研究を継続してゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、北海道の「人智学共同体」の調査、あるいは、ヴァルドルフ教員養成の調査などを計画していたが、理論研究の仕事に大幅に時間をとられ、新たなフィールドの開発には至っていない。そのかわり、継続的な課題、すなわち、1、カトリック修道院の参与観察、2、ブータン調査、3、シュタイナー学校におけるエポック授業実践は着実に積み重ねており、その中で多くの新しい気づきが生まれている。以上の理由から「研究目的」はおおむね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで続けてきたフィールド調査(1、修道院、2、ブータン、3、シュタイナー学校)を継続し、より親密な信頼関係のもと、フィールドの記録を残してゆくことを目指す予定である。また、研究の中心は理論研究に重点を移しつつあり、『無心の思想』の出版に向けた作業を進めると共に、白百合女子大学の鈴木忠氏との共著『生涯発達とライフサイクル』(東京大学出版会、出版予定)を早期に完成させ、またミネルヴァ書房から刊行される『ケア』講座についても、早期の刊行に向けて作業を進めてゆく予定である。
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