2012 Fiscal Year Annual Research Report
オールタナティヴ教育における「稽古」の思想と「宗教性・精神性」の教育人間学的解明
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22530818
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西平 直 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90228205)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピリチュアリティ / オールタナティヴ教育 / 稽古 / 宗教性 |
Research Abstract |
オールタナティヴ教育を「稽古」の思想の視点から検討する中で「宗教性・精神性」の問題を考察する本研究の第三年度の成果は以下の通りである。 1、海外におけるフィールド調査として、一昨年、昨年に引き続き、ブータン国への調査を行った。オールタナティヴな近代を目指すこの国において、近代学校の制度がいかなる意味をもつのか、その中で、宗教性・精神性がいかなる形で考慮されているのか。今後も調査を継続する予定である。2、カトリック修道院における参与観察を継続して行った。その養成システムについて、修道院長から情報提供を受けると共に、現在抱えている困難などを調査した。3、文献研究としては、「無心の思想」をめぐる思想研究の出版が一三年に持ちこされるが、岩波書店から出版される予定である。また、ケアをめぐる総合的研究や、ライフサイクルの総合的研究の成果も、既に出版社との打ち合わせもできており、二〇一三年度中には出版の予定である。4、エリクソン研究を土台として、ライフサイクル研究と「稽古」研究、また「精神性・宗教性」の関連を総合的に検討する理論枠組みを構想中である。その成果発表は先のことになるが、包括的な研究の地平が開かれつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、オールタナティヴ教育を、①「稽古」の思想の視点から検討するという課題と、②「宗教性・精神性」の視点から検討するという二つの課題を組み合わせて行っている。 ①の課題に関しては、「稽古」の問題を「ライフサイクル」のなかに位置づけることによって、参与観察と理論研究の同時並行を試みている。 カトリック修道院の継続的な参与観察は多くの新たな気づきをもたらし、ゆっくり時間を掛けながら、時代の変化のなかで次の世代を養成する課題が、いかに「待つ」営みであるか、しかし「待つだけ」では進むことができない、そのために「祈る」という構図が明確に見えてきた。 また、継続して行っているブータン調査のなかでも、新しい世代の問題が浮かび上がり、近代教育のなかで、いかに伝統的な価値を新たな仕方で再発見し、再創造してゆくか、その課題が明確になってきた。 ②の課題に関しては、上記のカトリック修道院、およびブータンにおけるフィールド調査のなかで絶えず「宗教性・精神性」が問い直されているが、とりわけ、文献研究のなかで大きな進展を見せ、ひとつには「無心」概念をめぐって思想研究が進み、二つには「ケア」研究のなかでその「宗教性・精神性」が問い直され、三つには、エリクソン研究を土台として、ライフサイクル研究と「精神性・宗教性」の関連を総合的に検討する理論枠組みを構想中であり、包括的な研究の地平が開かれつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究が着実に進んでいることから、これまでの研究スタイルを継続する予定である。 1、研究の目的は、オールタナティヴ教育を「稽古」の思想の視点から検討し、「宗教性・精神性」の問題を考察すること。但し、「オールタナティヴ教育」の解明が焦点であるというより、「オールタナティヴ教育」を場面として、そこに立ち現れてくる理論的問題を検討するという点に問題の焦点が移ってゆくことになる。 2、海外におけるフィールド調査としては、既に五年間継続しているブータン王国への調査を行う。オールタナティヴな近代を目指すこの国において、近代学校の制度がいかなる意味をもつのか、その中で、宗教性・精神性がいかなる形で考慮されているのか。今後も調査を継続する予定である。 3、カトリック修道院における参与観察も継続する。その養成システムについて、修道院長から情報提供を受ける中で、多くの新しい研究課題が明確になってくるためである。 4、文献研究、理論研究は、研究の成果を発表するという仕方で展開してゆく。①「無心の思想」をめぐる思想研究の出版(岩波書店から出版予定)。②ケアをめぐる総合的研究の出版(ミネルヴァ書房から出版予定)。③生涯発達とライフサイクルの総合的研究の成果(東京大学出版会から出版予定)。④子どもの死生学をめぐる総合的研究(みすず書房から出版予定)。以上の出版計画は既に校正に入ったもの、入稿中のもの、執筆中のものなど、さまざまであるが、すべてこの一二年のうちには完成させる予定である。
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