2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世前期日本漢学教育に関する実証的研究―中国語との関係性を指標として―
Project/Area Number |
22530826
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
朱 全安 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (20266183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHARD Robert 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30571492)
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Keywords | 教育史 / 文化史 |
Research Abstract |
本研究は、近世前期日本の漢学教育を政治・社会・文化との関わりの中で捉え、中国語との関係性を指標として、その根底にある外国文化摂取の側面を解明することにより、当時の漢学教育機関の漢学教育の本質を実証的に探究するものである。本研究では、林家塾・水戸藩・加賀藩をはじめ各地の漢学教育機関を考察の対象として、それらの漢学教育の中での中国語の位置を手掛かりとしながら、それらの機関の漢学教育における中国文化摂取の姿勢を明らかにし、多元的に近世前期日本漢学教育の実態・理念・目標の究明を進めてきた。本年度(平成23年度)は、とりわけ林家塾が大いに発展した寛文年間(1661年-1673年)を取り上げ、第二代当主林鷲峰をはじめとする林家の人々が、朱舜水および彼が話す生きた漢語に対してとった姿勢について追究した。また、林家の人々がとった対応と対照するため、林家周辺の漢学者や好学の大名が、朱舜水および生きた漢語に対して示した反応について探究した。具体的には、下川三省との関わりで、小城藩主鍋島直能の中国の言語・文化に対する姿勢について、五十川剛伯との関わりで、加賀藩主前田綱紀、加賀藩家老奥村庸礼、藩儒木下順庵の生きた漢語に対する姿勢について考察した。これらの事例との比較により、生きた漢語の摂取、朱舜水との接触に関して林家が取った姿勢が決して積極的なものでなく、むしろ保守的なものであったことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明確に設定された研究の目的に従い、適正に立案された研究実施計画に沿って、現地調査・史料研究・論文執筆・研究発表が滞ることなく達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成23年度)までに本研究課題の探究を通して得られた研究成果を基盤として、更に研究を発展させる。具体的には、引き続き近世前期の主要な漢学教育機関の関係史料の調査・発掘に努め、中国語との関係性を指標として近世前期漢学教育の考察を推し進める。併せて、様々なメディアを通して研究成果を逐次、国民・社会に伝達する。最終年度(平成24年度)に当たり、研究成果を最終的に取りまとめ、最終成果を学術論文・学会発表・シンポジウムのかたちで広く国内外に発信する。
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