2012 Fiscal Year Annual Research Report
日米における新自由主義教育改革の教育法的および教育制度論的研究
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22530853
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
世取山 洋介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90262419)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 教育財政 / 教育条件整備基準 / 新自由主義教育改革 / 福祉国家 / 子どもの権利 / 権利としての公教育の無償性 |
Research Abstract |
本年度は4年の期間中の第3年度にあたっていたが、日本に研究対象を絞り、先行研究の蓄積が少なく、力を集中して検討する必要のあった課題、すなわち、戦後日本における教育財政法制の歴史的展開の特徴、財政法制の基礎に座るべき教育条件整備基準にかかわる法制の歴史的展開の特徴、ならびに、教育財政法制をコントロールすべき教育を受ける権利および公教育の無償性という考え方をめぐる学説史および判例史に取り組むことになった。財政法制史に関しては、1945年から52年までの時期、1952年から1980年までの時期、1980年以降の時期に区分し、第1期における条件整備基準立法なき教育財政法制の確立、第2期における条件整備基準立法の部分的補充とその拡大の不発、第3期における新自由主義的改革のもとにおける財政基準さえもの誘拐という状況を描き出すことに成功した。また、条件整備基準立法については、戦後改革期に包括的な法の制定が意図され、古典的地方自治論から福祉国家的地方自治論への跳躍の萌芽があったもののそれが失敗に終わったことを論証した。さらに、無償性については、日本の憲法学が、救貧を主要な内容とする福祉国家の第1段階に対応する解釈論から抜け出していたいことを明らかにし、それに代わる代替的な解釈のあり方を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、教育財政及び学校体系に対して新自由主義教育改革が与える影響を明らかにし、それに対して子どもの権利がどのような規制をかけうるのかを検討することを目的としていた。第3年目の研究成果により、教育財政制度に関する研究のうち日本に関する部分は終了し、アメリカとの比較を行うためのプラットホームを作り上げることができた。また、教育条件整備法制の日本における歴史的展開をフォローする中で、学校体系に関する基準がどのように変化していったのかもおおよそつかむことができるようになり、最終年度の課題として残されている学校体系改革研究のための基礎を作り上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、学校体系改革の日米比較を展開させるとともに、教育財政法制のアメリカにおける変容と日本における変容との本格的な比較を行う予定である。学校体系改革については、高校に焦点を当て、日米における後期中等教育制度に関する基準設定の歴史的変遷の中に、近年における新自由主義教育改革の影響を置き、その特徴を明らかにするとともに、教育の機会均等という法理に基づいて、その批判的検討を行う予定である。
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Research Products
(1 results)