2011 Fiscal Year Annual Research Report
教育空間の変容と自己形成の相互関係についての基礎的研究
Project/Area Number |
22530857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前平 泰志 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70157155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末本 誠 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80162840)
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Keywords | ローカルな知 / 生涯学習 / ライフヒストリー |
Research Abstract |
平成23年度に、連携研究者、研究協力者の参加で、フィールド研究会を6月と2月に2回開催した。また、「研究実施計画」にも記していたように、パリ第8大学のジャン=ルイ・ルグラン教授を招いて、セミナー「自己教育としてのライフヒストリー-世界文化か固有の文化世界か」を実施した。討論参加者には、ユルゲン・シュリーヴァー教授(ベルリン・フンボルト大学)、テレザ・アムーン氏(舞台芸術家)、鈴木慎一名誉教授(早稲田大学)らが加わった。 研究目的の精緻化が進められ、日本社会教育学会において、吉田正純連携研究者と、以下の3点を中心に共同発表を行った。 (1)地域教育空間の自律性の再構築-近代の教育空間が学校教育の他律的・排他的空間を中心に同心円的に構築され、地域はこれを補完し支える従属的な空間とされてきた。これに抗して、学校的な教育空間の配置を極力避け、あえて非効率性や偶発性の余地を残す視座を研究に取り入れた。 (2)「集合的記憶」の再構築-「地域課題」や将来像を考える上で、安易に成功例や理論に答えを求めず、重層的な「集合的記憶」を掘り起こすことを念頭においた。10数年かけて、地域の人たちが歌い継がれてきた「伊勢音頭」を収集した地域住民への聞き取り調査を行った。地域や個人によって、微妙に歌詞やメロディーの異なる「伊勢音頭」の音と文字を後世に残そうとしたこの活動は、貴重な記録であることを確認した。 (3)「参与的客観化」のツールとしての「社会調査」-客観主義的な調査研究を排して、アンケート、聞き取りなどを中心にした調査活動に取り組みつつある。私たちは「地域課題」を掘り起こすアンケートを実施する際にも、住民との共同作業を行って、調査票の作成や予備調査の段階で、研究者側の問題設定を問いなおす作業に繰り返し取り組んできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象にしている地域社会の変貌が、予想以上に急速になされていっているために、研究調査の方法や内容を問い直さざるを得なくなっている。また災害などへの対応も視野に入れた地域住民のニーズをどのように研究の中にとりいれられるかを考慮せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
野殿・童仙房地区住民全戸を回って聞き取り調査活動を行いたい。平成23年度に引き続き、地域住民自身が住民から聞き取っていた民話や民謡のデータのアーカイブ化も可能であれば行いたい。
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Research Products
(5 results)