2011 Fiscal Year Annual Research Report
日英高等教育機関における学生支援に資する大学機関研究(IR)の基礎的研究
Project/Area Number |
22530881
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
沖 清豪 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70267433)
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Keywords | Institutional Research / 機関研究 / 学生支援 / 英国高等教育 / 高等教育改革 |
Research Abstract |
本研究全体の目的を踏まえた2011年度の活動と目的は、(1)日本国内で大学管理・運営部局で急速に関心が高まっている高等教育機関研究(Institutional Research,IR)の本来的な理念と実態とを再検証すること、(2)英国における高等教育改革と機関研究の進展状況と制度化の実態、課題析出のために訪問調査を実施すること、(3)説明責任(アカウンタビリティ)遂行という観点から、日本国内におけるIR概念の「濫用」に関する状況を整理すること、(4)今後の高等教育改革のために必要とされる「学生支援」という観点からIRの理念と実践を再構成し、英国アンケートのための調査票案を作成することであった。 (1)および(3)については、特に私立大学におけるIRの現状について検討し、特に立命館大学の「教学iR」や同志社大学を中心として進行している大学間でのデータ比較の方策を通じて、特に教学面でのIRの実践の蓄積が急速に進んでいることを確認した(雑誌論文1)。一方で経営面でのIRの実践蓄積もあり、概念把握の困難さが続いている点にも言及している。(2)については英国内のIR先進大学の訪問を通じて、特に本科研申請時には想定できなかった連立政権の樹立後、英国における学生調査や支援の動向が転換しつつあることを明らかにし(雑誌論文2)、さらに日本と同様に教学面でのアカデミック・インフラという質保証システムの再構築が進められており、その中で情報公開が強く求められ、結果的にIRが必要とされている点を明らかにした(雑誌論文3)。(4)については、山形大学や広島大学の学生支援、とりわけ障がい学生支援の取組を通じて日本における課題を確認し、また英国大学に対する実態に対する質問紙調査のための質問項日を検討した。なお調査は英国の2011/12年度中に郵送調査で実施するための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的のうち(1)IRの歴史的・実証的再検証については昨年度、成果を公表済み。(2)英国におけるIRおよび高等教育改革の状況については、本年度の成果を含めて実態を明らかにしており、アンケート調査を踏まえた課題の析出を最終年度に実施予定。(3)日本国内における問題点の検証については、本年度に一定の成果を公表済み。(4)学生支援という観点からのIRの再構成と理論研究が最終年度の主たる課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度までの成果を踏まえて文献調査および訪問・聞き取り調査を重ね、英国内の学生支援改革の動因を分析し、連立政権成立後(2010年以後)の方向転換の背景を明らかにする。特に、アカデミック・インフラストラクチャーの再構成について、政策レベルと個別機関レベルで検証する。また、前年度から準備中の質問紙調査を実施し、教育機能をめぐる個別大学の企画機能、IR機能の実際を明らかにする。(2)これまでの調査結果をあわせて、英国内の動向から日本への示唆を(これまで明らかにした中退率対策や学生満足度調査以外の点から)検討し、米豪などから遅れて発展しつつある日英両国のIRの動向と課題を明らかにし、成果報告書としてまとめるとともに、その成果の一部を秋の学会(2012年11月の教育制度学会を予定)で報告する。
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