2011 Fiscal Year Annual Research Report
シティズンシップ教育の政治的意義に関する日英比較研究:多元化社会と価値形成教育
Project/Area Number |
22530886
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
清田 夏代 南山大学, 人文学部, 准教授 (70444940)
|
Keywords | 教育学 / 英国 / シティズンシップ / 多元化社会 / 価値形成 / 政治教育 / 民主主義 / 国際比較研究 |
Research Abstract |
2011年8月にロンドンで大きな暴動が発生した.この暴動は当初,移民の不満を背景としたものと報道されていたが,白人の若者が多く関与していたことが明らかになるにつれて,移民問題を超えた社会全体の新たな階層問題の存在が現れている.すなわち,白人貧困層が政治的主張の手段を失うようになってきているということだ.本研究においてはシティズンシップ教育が政治状況に対して持ちうる可能性を探求することを目的としているが,今回生じたこの問題は,本研究の重要な調査,分析の対象となった.2011年9月1日~10日にかけて,イギリスでこの問題に関連する調査,資料収集を行い,白人貧困層と移民の利害対立と政治的関与のあり方についての仮説をまとめた.その研究成果は,教育行政学会第46回大会(2011年10月8日)にて,自由研究「英国におけるシティズンシップ教育とアイデンティティ・ポリティクス-多元主義的共生の限界と新たな社会統合の課題-」の報告として行った.この研究報告においては,白人貧困層が陥っている政治問題について明らかにし,シティズンシップ教育が意図すべき政治教育の課題を明示した.さらに,英国のシティズンシップ教育の基本的理念の立案に貢献したB.クリックのシティズンシップ教育論及び政治教育論の重要性について分析し,これについては雑誌『現代思想』(2012年4月号)に「若者・民主主義・政治教育-新たな社会統合の課題-」として寄稿した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国におけるシティズンシップ教育の政治的意義を探求するという課題については,現在,英国の移民と非移民がそれぞれに政治的に困難な立場に置かれているということを明らかにし,こうした問題に対してシティズンシップ教育がどのような役割を果たしうるのかという課題が立ち上がった.この課題をさらに深めるためにB・クリックの民主主義論の意義の再検証を開始した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究において,次の段階の課題を明らかにし,B・クリックの民主主義論の再検討を始めた.今年度は,第一にこの作業をより包括的に行う予定である.また,若者たちの政治状況,政治選択,投票行動ということについては,常に様々な要因が働き,一定ではない.実際,英国においては極右政党の勢いが衰えてきているという報告もある.現地調査を行い,こうした実態について明らかにしていく.
|