2011 Fiscal Year Annual Research Report
自治体財政難が公立博物館に及ぼす長期的影響に関する研究
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22530888
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
瀧端 真理子 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (70330165)
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Keywords | 社会教育 / 博物館 / 自治体財政 / 公益法人制度改革 / 指定管理者制度 / 情報公開 / 水族館 / 寄附金 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自治体財政難が公立博物館に及ぼす影響について、戦後の公立博物館成立期から現在、将来に至る長期的視野から分析を行い、地域の実情に応じた博物館運営の可能性を探ることである。2年目に当たる平成23年度は、以下の内容を実施した。 1.前年度に行った神戸市への情報公開請求を切り口として、指定都市での指定管理者応募書類に対する情報公開請求への対応状況と問題点をまとめ、『日本史研究』591号で公表した。 2.京都水族館への建設反対運動、及び神戸市立須磨海浜水族園の指定管理者交代を事例に、「水族館をめぐる価値観の多様化」として、日本社会教育学会で口頭発表を行った。京都水族館の場合は、市民による水族館建設反対運動が水族館の展示内容・施設を一部変更させ、京都大学野生動物研究センターと学術交流協定を結ぶきっかけを作ったことを指摘し、また、須磨海浜水族園の場合は、新指定管理者が意欲的な展示更新や学術・環境保全事業を行う一方、収益事業の積極的導入を図っている点等を指摘し、日本の水族館が抱える課題(集客施設と社会教育施設、両方の役割を担わされてきたこと、利用者の意識改革が必要な点等)について論じた。なおこの2事例については、追加調査及び論文化作業を行っている。 3.全日本博物館学会で「公益認定取得後の博物館管理運営財団による寄附金獲得策について」のタイトルで口頭発表を行い、公益法人制度改革に伴う博物館管理運営財団の公益認定取得状況を報告するとともに、寄附金獲得に向けた広報戦略の先進事例を紹介し、かつその問題点を指摘した上で、望ましい広報戦略(寄附金の使途をあらかじめ明確にし、事後、実際の使途を公開すること、寄附金控除を具体的な計算例を交えて説明し、確定申告上の手続きに触れること、従来の友の会的組織との関係を整理・説明すること等)を提案した。 4.大町山岳博物館の創立60周年記念式典、及びリニューアル計画について、現地での参与観察及び資料・情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」のうち、「博物館行財政にかかわる国の政策」(指定管理者制度及び公益法人制度改革)に関しては、学会での口頭発表や『日本史研究』への寄稿により、一定の成果を公表できた。一方、「自治体の博物館政策」に関しては、神戸市・京都市に関しては水族館を切り口に、新しい動向の調査に基づく学会発表は出来たが、論文化が遅れていること、また長期的視野からの自治体財政・人口変動の把握が進んでいないため、(3)と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度が本研究課題の最終年度であるため、これまでに口頭発表をしていながら論文化が進んでいない項目についての論文化を急ぐ。また、博物館法制定当時からの、博物館の入館料に関する議論と実態の推移を切り口に、公立博物館の存在意義を巡る考察を行い、また、当初の研究計画で予定していた、大町市・横須賀市・大阪市での長期的な人口・財政の変動が博物館政策に及ぼした影響について検討を行う予定である。
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Research Products
(3 results)