2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス・アニマトゥール(社会教育関係職員)の専門職性とアイデンティティの形成
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22530895
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Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
岩橋 恵子 志學館大学, 法学部, 教授 (70248649)
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Keywords | フランス / アニマトゥール / 社会教育関係職員 / 専門職性 / 適性能力 / 資格免状 / コンピテンシー |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランスのアニマトゥール(animateur社会教育関係職員)の専門職性とアイデンティティ形成の今日的到達点を明らかにすることである。本年度は、アニマトゥールに求められている「適性」「専門職性」能力の特質を、今日進められているアニマトゥール資格の再編との関わりで分析・解明した。そこからは、二元的ともいえるアニマトゥールの能力構造と、資格再編の中でのその構造の変容も見られ、変動期の社会教育関連労働の複雑な構図が示唆されている。概要は以下の通りである。 1)アニマトゥール職資格免状で求められる「専門職性」能力については、近年のアニマトゥール労働の多様化・複雑化の中で、職務内容の変化が求められ、それに伴っての能力再編が図られている。その最大の特質は、(1)コンピテンシー概念(単なる知識でなく行動に移すことのできる経験・能力を重視する)を導入し、(2)それを資格能力基準の項目として詳細化・具体化が図られ義務化されることになったことである。それらを一般化するならば、(3)現場での対象者と向き合う集団的活動による市民性の発達への働きかけ(教育的営み)、活動をつなぐコーディネート(協同的営み)、組織管理運営実施(運営的営み)など、極めて広範かつ機能的・即戦的な能力が求められるようになっている。 2)それに対して、アニマトゥール職適性証(BAFA)/管理職適性証(BAFD)で求められる「適性」能力は、(1)民衆教育運動の培ってきた闘士性(militantisme)と自律性(2)知育を中心とする学校教育を補完する市民性(3)プロとなるための教養といった、アニマトゥールの歴史性をふまえたものである。そしてこれらの「適性」能力を前提にアニマトゥール職に就く様式が歴史的に広く定着している。だが、アニマトゥールの専門職性の能力再編の中で、従来専門職性に対して一定の独立性をもった能力形成が図られてきた「適性」能力もまた、その再編が不可避となってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニマトゥール資格免状改革の動向および資格養成の分析を通して本研究の課題の一つであるアニマトゥールの専門職性の性格が解明されつつあるが、そこにおけるアニマトゥールのアイデンティティの形成がどのようであるのかについての分析は課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
アニマトゥールのアイデンティティ形成については、これまでとってきた資格養成の内実分析からのアプローチよりは、むしろ労働現場ないし労働組合におけるアニマトゥールの地位向上のための動きの分析からのアプローチ方法をとることによって解明できるように思われる。したがって、24年度は労働組合の動向を中心に探る計画である。
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