2012 Fiscal Year Annual Research Report
教職のメリトクラシーに関する社会学的研究-高校教師へのインタビュー調査をもとに-
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22530910
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
金子 真理子 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 准教授 (70334464)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カリキュラム / 社会学 / 教育学 / 教師 / 教科書 / イギリス / 教職 |
Research Abstract |
教職、なかでも「教えるという仕事」に焦点を当てる時、本研究は、既存の社会に潜むリスクの指摘を含めたいかなる知識が、カリキュラムを通して伝達されているのかという点に注目する。そこでは、教室で使用される教材の背後にある目的と思想、教師の解釈と認識、そこでの多様な意見の取り扱い、といった問題に注目して、カリキュラムの社会学的分析を行いながら、それとの関連で、教職という仕事の社会的特質を明らかにする。最後に、このような教職という仕事にとって、教員評価、学校評価、教職のメリトクラシー化、および教育の市場化といった動向がどのような意味をもつのかを、社会学的に検討する。 研究代表者は 平成24年度の8月までは、東京都を中心にインタビュー調査を行い、平成24年度2012年9月より渡英後、イングランドの義務教育の最後の二年間(キー・ステージ4)で必修の「GCSE サイエンス」という科目のコースの一つ、Twenty First Century Scienceコースに準拠した教科書の近年の変化に注目し、その変化の背景を社会学的に検討する作業を開始した。本年度に行った主な作業は以下の通りである。 第一に、このコースに準拠した教科書『Twenty First Century Science GCSE Science Higher』の第1版(2006年刊行)から第2版(2011年刊行)への変化の要点を明らかにした。第二に、関連する政策文書の分析、および、教科書の執筆陣、教師、科学教育者をはじめとする関係者に対するインタビュー調査を進めることによって、この変化の背景を分析するためのデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日英両国で多数の教師と懇談することにより、教職の仕事をカリキュラムの問題と絡めて検討するという分析枠組みの重要性を再確認した。イングランドのTwenty First Century Scienceコースに準拠した教科書の近年の変化に注目し、その背景を探る作業を行うことによって、カリキュラムの社会学的研究を具体的に進めるとともに、教職という仕事の変容について、新たな分析的観点を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は2013年8月まで在英しながら、Twenty First Century Science」コースに準拠した教科書の近年の変化に注目し、その変化の背景を社会学的に分析する作業を行う。研究代表者はすでに、このコースに準拠した教科書『Twenty First Century Science GCSE Science Higher』の第1版(2006年刊行)から第2版(2011年刊行)への変化の要点を明らかにした。今後採用する方法は以下である。 第一に、本コースの内容を規定しているコース内容規定文書(Specification)の年度間比較分析、ナショナルカリキュラムに基づいてコース内容規定文書を規制しているGCSE教科規準(GCSE Subject Criteria for Science)の年度間比較分析、両年度間共通のナショナルカリキュラムの分析を行う。 第二に、この教科書の作成とプロデュースにかかわっているナフィールド財団と教科書執筆陣を中心とした教科書作成グループ、および、科学教育の専門家や科学教師たちに対して継続的に実施しているインタビュー調査から得られたデータを分析する。 第三に、イングランドのカリキュラム開発と教科書作成のシステムと文化、および、教師文化に関する知見を動員する。 以上の文書資料調査およびインタビュー調査は、2012年9月からイングランドで開始し、2013年8月まで継続する予定である。2013年9月に日本に帰国した後は、日英で実施した調査結果を比較検討しながら、第一に、カリキュラムと教職という仕事の関係性について分析する。第二に、教職のメリトクラシー化、および教育の市場化といった動向が、教職という仕事と学校カリキュラムに対して、どのような影響を与えるのかを社会学的に分析する。
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