2011 Fiscal Year Annual Research Report
オーストラリアにおける政権交代後の先住民教育政策の動向に関する実践的分析
Project/Area Number |
22530925
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
伊井 義人 藤女子大学, 人間生活学部, 准教授 (10326605)
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Keywords | 政権交代 / 比較教育学 / 先住民教育 / オーストラリア / 社会的公正 / 教育政策 |
Research Abstract |
オーストラリア連邦政府が労働党政権に移行して、3年が経過した。その間、前教育大臣であるジュリア・ギラード氏が首相に就任し、学校教育の質の向上が、これまで以上に、オーストラリア国内の世論の注目を浴びてきた。そして労働党の(先住民)教育政策が企画段階から実施段階に移行し、その状況を客観的に分析できる最初の時期が2011年度であった。 研究代表者は、今年度の研究実施計画の実現に先立ち、これまでの先住民教育に関する研究成果として博士論文「オーストラリアにおける先住民教育政策-社会的公正理念の変容-」を東北大学に提出した。これにより、1960年代後半から、各年代の保守系・労働党系政権が、どのような社会的公正理念を前提としつつ、先住民教育政策を策定実施してきたかを、振り返ることが出来た。 その蓄積をもとに、2011年8月にはオーストラリアでの現地調査を行った。そして、連邦政府、クイーンズランド州政府における先住民教育政策に対して及ぼす労働党政権の影響を資料収集、関係者インタビューを通して、分析した。その結果、先住民教員を含む教員研修の充実によって、学校教育の質の向上を目的とした教育政策に関する分析することができた。また、全国学力調査の各学校の結果がインターネット上に掲載されている「私の学校ウェブサイト」から、先住民生徒の教育成果が、保護者の学校選択にどのような影響を与えるのかも考察した。しかし、一方で、2012年3月には、クイーンズランド州では労働党が政権を奪取されるなど、ここ数年の労働党の基盤が連邦・各州とも不安定な状況に陥っている。これらの状況を鑑みた上で、最終年度には、先住民教育政策を再考する予定である。 以上の研究内容は、実施計画に沿って、日本比較教育学会、オセアニア教育学会で口頭発表、『週刊教育資料』など、教員向けの雑誌にも寄稿してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーストラリア現地調査を通して、同国における先住民教育政策に関する資料収集および分析、成果発表はおおむね順調に進展している。しかし、「おおむね」と表現したのは、オーストラリアに関する研究成果を、北海道の先住民関係の団体で公表する機会を、まだ構築せずにいるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のタイトルには「実践的分析」の名を含めている。そこには、オーストラリア先住民教育政策に関する研究成果を、日本で先住民教育に携わっている教育関係者と連携した上で、分析を深めていく意図があった。2012年度は、最終年度となるが、これまでの研究成果を日本の研究者、教育関係者と共有しつつ、何らかの政策提言をなす、工夫をしていきたい。 その一方で、それらの成果を日本の先住民教育政策と比較するための資料収集は、最終年度の課題である。
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