2012 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の土による造形表現遊びを活性化する環境構成に関する工学的研究
Project/Area Number |
22530965
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
竹井 史 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (60226983)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 土遊び / 粘土質土 / 利用土 / 発生土 |
Research Abstract |
本研究は、子ども(主として幼児)の人間形成に必要不可欠である理想的な土環境についてこれまで未着手であった工学的研究をもとに標準化し、現代において安全で安価に実現可能な環境改善のための具体的な方法を明らかにするものである。 今年度においては、利用可能な土環境として、浄水場における「発生土」および、砕石プラント会社において産出される「利用土」を採集し、それぞれの土に関し、レーザー分析および、SEM(電子顕微鏡)によって粒度分布分析を行い、その特徴を明らかにした。同時に、子どもの土遊びが活性化しない土環境に「利用土」を設置することによって子どもの遊びが変化することについて明らかにした。 具体的には、異なる地域の保育園2園(K園、A園)の保育園を対象とし、園庭環境における園庭土の比較調査を行った。A園は、K園とも子どもの土遊びが日常的に活発に行われているが、両園の園庭での遊びは異なり、A園の場合は、お団子作りなど土の粘性、可塑性を活かした遊びが行われていたのに対し、K園の場合はA園に見られた遊びがあまり見られなかった。この差違は園庭の土環境にあると考えられ、園庭土の粒度分析を行い、その特徴を明らかにした。分析の結果、A園の園庭に見られた、粘土、シルト成分がK園の環境では乏しいことがわかり、K園にA園同様の土環境を設置することで、K園の子どもの遊びの変化を観察した。その結果、K園の子どもの土遊びは、A園の子どもの遊びと同様のものが現れることになった。これらの調査研究から、園庭環境における土環境に粘性、可塑性をもつ環境を設置する事で子どもの造形的な遊びは活性化する事が明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、河川プラントから産出されている「利用土」についての、レーザー分析及びその設置による子どもの造形遊びの変化に関しては、2園での子どもの遊びの比較調査をもとに明らかにされ、その意義についても大きな成果を上げることが出来た。とりわけ、これまで、経験的にしか語られることのなかった園庭の土環境について、レーザー分析、及び、SEM(電子顕微鏡)の利用によってその実態が明らかになったことは意義あることであると考えられる。 一方、浄水場において産出される「発生土」についての分析、利用についても検討する計画でいたが、分析に関しては行うことができたが、その利用に関しては以下の2つの点から実施にいたっておらず、今後の課題と考えられる。 ①県によっては「発生土」は産業廃棄物としての扱いで、入手が難しいケースがあったこと、②「発生土」は川土を濾過することによって得られるが、その際に川特有の珪藻類が混入し、匂いの発生があること、また、濾過する際に、凝集剤が使用され「発生土」の乾燥時に土同士が固まり、粘土の滑らかさが失われる点があることがわかり、それらの対策に時間がかかっている点があげられる。関連施設等と連絡を取り合い情報を収集している段階であるが、安全面に関しては問題ないとの判断ができており、その実際の利用に関しては今後の課題として進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、「発生土」にかかわる問題点を解決すると同時に、「利用土」を含む粘土質土を利用した造形遊びの具体について分類し教材化を図りたい。 「発生土」にかかわる問題に関しては、安全性を最優先し、化学薬品の処理によって解決する方向を探りたいと考える。 土遊びの教材化に関しては、これまで収集した土遊びに関するデータをもとに、粘土質土が子どものどのような造形遊びを誘発するうえで効果的であるかについて検討を加えつつ、題材化できればと考えている。
|
Research Products
(1 results)