Research Abstract |
本研究は,1945年から現在に至る期間の日韓音楽教育関係史を,総合的にまとめることを目的とする。具体的には,1945年8月から現在までの韓国の音楽教育史を整理し,その上で,音楽教育をめぐる日韓両国の関わりを,音楽教育の基礎研究や研究・教育交流事例を通して明らかにし,関係史の構築をめざす。 平成22年度は,平成22年5月,7月,平成23年3月の三度にわたって,韓国で資料収集及び聞き取り調査等を実施した。最近の韓国の音楽教育の動向には,大きな変化がみられる。本研究では,特に2007年の教育課程に準拠した教科書が,2010年度から学年毎に順次,使用が始まったことに着目し,音楽科の教科書について入手,分析を行なった。2010年度は国定教科書の初等学校3,4学年,検定教科書の中学校1学年が,そして2011年度からは,いずれも検定教科書の初等学校5,6学年,中学校2,3学年が使用開始となった。それらを分析した結果,特徴的な点のひとつとして,日本の歌や伝統音楽が紹介されるようになってきたことがわかった。例えば初等学校3学年の国定教科書には日本古謡「さくらさくら」が取り上げられている。検定教科書については,出版社が多いため,全学年を通じてどのような教材曲が取り上げられているか,引き続いて分析作業を進めているところである。 韓国では2009年末に教育課程の新たな改訂の骨子が示され,音楽科の在り方がさらに変わろうとしており,例えば,特定の期間における集中履修や美術との合科等が模索されていることなどについても調査した。 また,日韓音楽教育関係史の基礎研究の一環として,筆者の地元である鳥取県を糸口あるいは接点として,音楽の関係を遡及する試みも始めた。
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