2011 Fiscal Year Annual Research Report
学習材としてのわらべうた・民謡の位置づけに関する基礎的研究
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22530981
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
権藤 敦子 広島大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (70289247)
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Keywords | わらべうた / 民謡 / 学習材 |
Research Abstract |
本年度は、これまで行って来た歴史的考察を継続し、一定の方向性を見出すとともに、新しい教育課程のもとで本年度より使用が開始された小学校における新しい音楽科教科書を検証する目的で以下の通り研究を実施した。 1.現在の音楽科教育において進められているわらべうた・民謡教材化の動向を検証するために、小学校音楽科教科書、および、指導書について、全体の分析を行い、民謡・わらべうたの取り扱いの変化を概観した。あわせて、現在重視されている、音楽を特徴づけている要素や音楽の仕組みを聴き取り、音楽の面白さやよさを感じ取る方向での学習指導と、学習材としてのわらべうたや民謡のもつ意味のずれを含めて、教科書全体の構成を検討した。 2.歴史的考察のうち、高野辰之に焦点を絞った検討に重点を置き、東京音楽学校における邦楽調査掛の中心的な担当者としての業務、邦楽科設置に到るまでの東京音楽学校とのかかわりを、東京芸術大学附属図書館、長野県下高井郡野沢温泉村おぼろ月夜の館、および、長野県中野市永江高野辰之記念館における史料調査を中心に明らかにした。 3.東京音楽学校邦楽調査掛に関して、その初期に行われた俗謡の調査に絞って考察し、邦楽と俗謡の関係、俗謡調査における国語調査とのかかわり、邦楽という術語の使用の変化を明らかにした。 4.高野辰之に関して、その日本歌謡史における邦楽の位置づけと、演歌、流行歌、民謡の位置づけを検証し、近代の歌謡史への高野独自の視点から得られる現代への示唆を明らかにした。 これらの成果は、基本的に、研究の目的に示した、楽曲中心に構築された西洋芸術音楽ベースの音楽科教育の枠組みを変える方向性に結びつき、固定化したわらべうたや民謡の捉え方にある問題性を明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、2度の学会発表、3本の研究論文を中心として、概ね研究の目的にそった検討を進めることができ、「民謡」のとらえ方にかかわる問題を、歴史研究を軸として検討したり、教科書の分析を通して全体像を概観したりすることができたので。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている歴史研究を継続することで、唱歌教育期を中心として、邦楽、民謡といった近代における術語の検討に一つの見通しを見出すと同時に、新しい学習指導要領による小学校、および、平成24年度に新たに発行される中学校の音楽科教科書と、教育実践における変化についても検討を行い、「我が国や郷土の伝統音楽」として教材化が進む現状の課題の解明を引き続き進めていく。
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Research Products
(5 results)