2011 Fiscal Year Annual Research Report
小学校国語科教科書におけるノンフィクション教材の史的研究
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22530982
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
幾田 伸司 鳴門教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (00320010)
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Keywords | 教育学 / 国語科教育 / 小学校教科書 / 教材史 / ノンフィクション |
Research Abstract |
本研究は、戦後小学校国語科教科書の教育内容の史的変容を考究する国語教科書史研究の一環として、伝記を代表ジャンルとするノンフィクション教材を対象とした教材史研究を行うものである。具体的には、教材を通して学習者に育成しようとした国語学力の史的変容の解明、教材を通して学習者に提示された規範的人間像の史的変容の解明の二点を解明することを目的とする。 平成23年度は、平成22年度までに整備したデータベースを用いながら、戦後に刊行された小学校国語教科書に採録された広義の「伝記」教材の傾向を分析した。昭和40年代までの「伝記」教材は、学者や芸術家を積極的に採録して文化国家の建設を志向するとともに、近代社会の実現を肯定的にとらえ、近代化への寄与を重視する方向性を示している。また、勉学、努力、利他的精神が強調され、そうした生き方を通して何らかの成功を収めた人物が採録される。また、日本人の活躍も積極的に紹介されている。一方、昭和50年代以降は「伝記」の採録自体が減少し、特定の生き方を規範的に示すことが少なくなる。その中で採録された教材では、近代化への批判的眼差しが顕現化し、公害や環境問題といった近代社会の矛盾に対峙しようとした人物が増えている。また、同時代の人物が増え、歴史的偉人よりも学習者が身近に感じられる人物の伝記を採るようになるという傾向が見られた。個々の人物については、平成22年度に検討を行った「田中正造」の教材史を進めて論文としてまとめるとともに、宮沢賢治、ヘレン=ケラーについての資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度までに、戦後小学校教科書に採録されたノンフィクション教材に現れている規範的人物像の変容の概要を記述するとともに、代表的人物についての分析も行った。残された課題として、ノンフィクション教材で育てようとした学力についての分析を平成24年度に進めることで、研究課題の達成を見込むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行上の問題点は特にないが、規範的人物像の史的変容に研究の比重がかかり、平成23年度内に着手するはずであった国語学力の史的変容の検討が若干遅れ気味である。そこで、平成24年度は学力の検討に重点をおき、研究を進めることとする。
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Research Products
(2 results)