2012 Fiscal Year Annual Research Report
中等教育における統計的リテラシーのオンライン評価システムの開発
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22530990
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小口 祐一 茨城大学, 教育学部, 准教授 (70405877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 和裕 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (10400657)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 統計的リテラシー / 中等教育 / 評価 / 統計的思考力 |
Research Abstract |
平成24年度の目的は,生徒がコンピュータで回答することができる統計的リテラシーの評価システムを開発することであった。統計的リテラシーについて,コンピュータで回答できる評価システムを開発し,協力校において評価システムを試験的に運用した。 (1)評価システムの開発:統計的リテラシーの評価問題について,生徒がコンピュータで回答できる形式に変換し,評価システムを開発した。標本の偏りや標本分布などに関する評価問題について,3つの選択肢を提示し,いずれかを選択させた。選択すると「正解」(青色)または「不正解」(赤色)の反応を示し,続いてそれらの理由が示されるようにした。 (2)評価システムの試行的な運用:評価システムをモバイルコンピュータにインストールし,協力校の生徒を対象にして試行的に運用した。評価問題は16問であった。試行的運用の結果,回答の選択操作は容易であり,評価問題の内容に対する関心も高かった。残された課題として,正解または不正解の理由について,限られたスペースでは記述が十分でなく,理由を補足説明する必要があった。 (3)評価規準の修正:評価問題に対する対象者の回答を分析し,評価規準を修正した。標本の偏りについて,多くの対象者は無作為抽出と有意抽出の違いを認識できたが,インターネット調査による被覆度の違いを認識できなかった。標本分布について,多くの対象者は大数の法則の理解が十分でないことがわかった。そこで,大数の法則の命題を裏命題などに変換する必要がある場合と,必要がない場合を分けるなど,評価規準を精緻化するように修正した。 (4)評価問題の配列:評価問題の難易度に基づいて,標本の偏りや標本分布など同質と考えられる評価問題をグループ化した。評価問題の配列を検討し,評価の枠組みの各セルに対応させた。残された課題として,より現実的で基本的な評価問題を開発する必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,インターネット環境で利用可能な統計的リテラシーの評価システムを開発することであった。その目的を達成するため,次の研究計画・方法に従って,研究を推進した。 (1)統計的リテラシーの評価問題の開発:アメリカ合衆国で実施されている統計のAP試験とその問題集の問題を参考にし,わが国の中学校「資料の活用」領域,高等学校「データの分析」単元の内容に適合する統計的リテラシーの評価問題を開発した。たとえば,同じデータからかかれたヒストグラムと箱ひげ図を対応させる問題について,わが国の学習内容に含まれていないはずれ値を除いた表記による評価問題を開発した。 (2)統計的リテラシーの評価規準の設定:米国統計学会によるGAISEレポートの統計教育ガイドラインを参考にし,わが国の中等教育における統計的リテラシーの評価の枠組みを設定した。設定した枠組みは,一方の軸に変動性の項目を配置し,もう一方の軸に学年段階を配置して,変動性の理解と学年段階との関連を分析できるようにした。協力校で統計的リテラシーの学習状況調査を実施し,評価問題に対する回答を分析して,学習内容の系統性と難易度に基づいた評価規準を設定した。2つ以上の評価問題に対する回答をクロス集計し,評価問題間の関連についても分析した。 (3)統計的リテラシーの評価システムの開発:生徒がコンピュータで回答することができる統計的リテラシーの評価システムを開発することができた。問題と選択肢を提示し,回答に対して正解,不正解とその理由について提示することにより,生徒の自主的な学習を促進する評価システムであった。協力校において評価システムを試験的に運用し,回答方法の容易性と評価問題への関心の高さが明らかになった。評価の枠組みは維持しながら,試行的運用の結果を生かして評価規準を精緻化した。
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Strategy for Future Research Activity |
統計的リテラシーの評価の枠組み,評価規準の設定と評価問題の開発,その研究成果に基づく評価システムの開発は,ほぼ達成した段階である。今後の研究の推進方策は,評価システムをインターネット上で公開することである。また,より現実的で基本的な評価問題の開発を進めるとともに,正解,不正解の理由に関する記述を充実させ,生徒の自主的な学習に適した評価システムに改善することである。 (1)統計的リテラシーの評価システムの公開:平成24年度までにコンピュータで回答できる統計的リテラシーの評価システムを開発した。平成25年度は,研究代表者が評価システムをホームページ上で公開する。研究分担者と研究協力者は中学校,高等学校の生徒の自主的な学習としての利用可能性を検討する。また,研究協力者の学校で実際に評価システムを動作させ,生徒の意見を聴取して改善をすすめる。問題点として,サーバーを継続利用するための維持費用が挙げられるが,維持費用が高額になる場合には大学のIT基盤センターに協力を要請する。 (2)統計的リテラシーの評価システム手引き書の作成:中学校,高等学校の教員が評価システムを利用する際の手引き書を作成する。平成24年度までに,評価問題に対して生徒が誤った判断をする傾向を明らかにした。平成25年度は,生徒の誤った判断を修正するための教授方略を構想する。手引き書には,評価問題,正解,不正解とその理由,誤った判断を修正するための教授方略とその事例を記述して,中学校,高等学校の教員が評価システムと指導の一体化を図れるように支援する。 (3)統計的リテラシーの評価システムの利用促進:数学教育関連の研究会において評価システムのパンフレットを配布し,利用促進を図る。研究分担者がパンフレットを作成し,研究代表者,研究協力者とともに,中学校,高等学校の教員に対してパンフレットの配布を行う。
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Research Products
(7 results)