Research Abstract |
本研究では,小学校高学年担任の男性教師1名の走り幅跳びの授業を対象に,「運動の構造的知識(走り幅跳び運動の技術的知識の提示)」を一次情報として,また「児童のつまずきの知識(走り幅跳びの最適なプログラムの提示)」を二次情報として,それぞれ介入(提示)し,彼の教授戦略が従前に比してどのように変化するのかを,実際の授業観察と授業分析を通して明らかにすることを目的とした.このとき,被験教師には3度にわたる「展開型」の表現様式への記述を依頼し,その間に,1度目の介入として一次情報の提示を,2度目の介入として二次情報の提示を,それぞれ行った.結果の概要は以下の通りである.(1)被験教師は2度の介入により,「展開型」の表現様式の記述が顕著に変容したことが認められた.(2)介入授業前の単元学習の観察・分析の結果,被験教師は,課題形成・把握場面ではシグナリング戦略を,課題解決場面ではモニタリング戦略とコミットメント戦略を,それぞれ単発的に発揮していたことが認められた.(3)介入授業後の単元学習の観察・分析の結果,被験教師は,課題形成・把握場面では3つの戦略の連続使用による戦略の多様性が認められ,課題解決場面ではモニタリング戦略とコミットメント戦略を発揮していたことが,それぞれ認められた.とりわけ,コミットメント戦略においては,介入前には認められなかったく肯定的フィードバック→矯正的フィードバック〉ならびにく肯定的フィードバック→発問)といった時系列的な組み合わせ(順列戦略)で展開されていた。(4)上記(2),(3)の結果より,被験教師が介入により,授業展開を戦略的に思考してきたことを伺わせるものであった,(5)「見込みのある教師」の授業実践段階の知識に介入・実験することにより,彼の教授戦略の発揮の実態が変容していたことが認められた.しかしながら,子どもの学習成果(技能)を高めるためにはロック・イン戦略を機能させること,学習成果(態度得点)を高めるためには授業実践段階の知識だけでなく,授業展開場面における独自の知識が必要であることが推察され,そうした知識を明らかにしそれらの知識に介入していく必要性があることが,それぞれ考えられた.今後は授業実践段階における介入実験を行う必要がある
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