2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス義務教育課程における国語新カリキュラムの総合的研究
Project/Area Number |
22530997
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
飯田 伸二 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (60289650)
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Keywords | 国語 / コレージュ(中学校) / 科目教育 / 義務教育課程 / フランス / 文学教育 / 国語力 / リテラシー |
Research Abstract |
1)フランスの義務教育課程で求められる国語リテラシーの具体像を明らかにする 2)リテラシー養成のために,どのような教材が,いかに動員されているかを調査する これら2点について昨年度の研究成果を報告する。 1)22年度はフランス教育学会で,義務教育課程の最終段階で実施されている前期中等教育修了認定試験で出題された問題について,過去10年間に出題された問題を分析した。23年度は,学会発表では時間の関係から紹介できなかった諸資料を付して,紀要論文として発表した。この論文で,義務教育課程で求められる国語力の実態をほぼ網羅的に詳らかにできた。 2)23年度は,コレージュの教科書の体系的な収集を継続して行った。コレージュ第4年級の教科書を収集し,さらに小学校の教科書も現在流通している教科書のほぼすべてを収集した。 さらに,近年のコレージュの国語教科書でホメロスの諸作品がどのように教えられているかを調査することで,古代学習が衰退する中,現代国語の授業が古代文明の伝達に寄与するようになったのか,その経緯を記述した。併せて,20世紀初頭(1925年)のコレージュカリキュラムの分析を行った。現代における古代文明にかんする授業の意義・特徴を明らかにするためである。 また,第6年級の教科書で美術史教育がどのように編成されているのかを考察した。2009年度から小学校,コレージュで一斉に導入された横断的科目である美術史教育が,コレージュのフランス語に与える影響を把握するためである。調査の結果,美術史教育導入の影響が明確に読み取れる教科書は少数派であった。理由は2つ考えられる。フランス語では,1985年のカリキュラム以来,「イメージの読解」という学習項目が既に導入されていた。また,美術史教育導入の主な狙いは,既存の科目の改革よりも,科目間の連携・強力を強化することで,教員の意識改革に資することにあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
義務教育課程のうち,中学校についてはほぼ計画通りに研究が推移している。初等教育については,具体的な研究成果の発表にはいたっていないが,教材の体系的な収集を行った。今年度は,小学校で実施されている全国学力到達度テストの分析,教材研究を通じ初等教育における国語の学習目標,教材の特徴を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,初等教育に関する調査・研究を集中的に行う予定である。特に,2010年からフランス全土で実施されてきた全国学力到達度テストは,オランド政権下で現状のまま維持されるかどうかは不透明である。オランド大統領が任命したフランス国民教育省新大臣は,2012年6月実施予定のテストについて,結果の全国集計を中止することをすでに発表している。このテストの問題はフランスの初等教育における学習目標を具体的に把握するばかりでなく,教育の方針を知る上でも貴重な手がかりである。それゆえ全国学力到達度の分析を今年度の中心的課題として取り組んで行く予定である。
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Research Products
(4 results)