2011 Fiscal Year Annual Research Report
四日市市・内部川沿いの農業地域における言語表現の豊かさの解明と教材開発
Project/Area Number |
22531020
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
余 健 三重大学, 教育学部, 准教授 (90345968)
|
Keywords | 方言調査 / 四日市市内部地区 / 農業文化に関わる行事名 / 農作業に直結する動作項目 / 人の性格や動作に関わる語彙項目 / 自然環境との関連 / ビデオ教材 / 授業実践 |
Research Abstract |
今年度は、最終的に四日市市内部地区で実施する小学校での授業実践をこれまで以上に強く意識し、方言調査の予備調査と本調査の項目案を調査協力者の坂正春氏や参加学生と共に検討した。まず、6月には四日市市内部地区の高年層2名を対象に、ビデオ収録を含む方言予備調査を実施した。その結果を踏まえ、8月の方言本調査の項目として、これまでのお手玉や面子等の遊びことばや蛇や彼岸花等の生活ことばに加えて、以下3点の調査項目を追加し、内部地区6町の高年層23名に確認した。(1)農業文化に関わる昔のレクリエーション的な行事の呼び方(ヒマチやアガリ)と内容の確認項目(2)農作業に直結する動作項目(ヒヤカスやカナゲル、ヒシャゲル等)(3)人の性格や動作に関わる語彙項目(チョケルやハシカイ等)(1)の項目の調査結果からは、かつての機械に頼らない手間暇をかけた共同的な農作業の実態や自然との共生的な関わり方が垣間見えた。尚内部地区内でも種もみを水につける作業の後、集まって蒸し餅を作って歓談するタナイケヒマチを行うのは、南小松町と采女町の一部のみであった。対して田植えの後のノアガリや収穫後のアキアガリと呼ばれる農作業の休日は、内部地区内で広く確認された。又タナイケヒマチ時の「種もみを水につける(含ませる)こと」を「ヒヤカス」と呼び、米を炊く前に水分を米に含ませたり井戸水や川の水でスイカ等を冷やしたりすることにも「ヒヤカス」が使えるという共通語の「冷やす」とは、異なる意味とその意味の広がりも内部地区内で広範囲に確認された。特に自然環境との関連では内部川のより上流側の水沢地区で「ヨゲ」、小山田地区で「トユー」と呼ばれる、川のユ(水)を温めて水田に取り込むための迂回路の呼び名は、より水の暖かい下流域の内部地区ではほぼ確認されなかった。上記で確認された豊かな言語表現を生かして、ビデオ教材を作成し内部小学校5年生を対象に授業実践を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水沢小学校校長の坂正春氏を中心に、各小学校の校長先生や四日市市教育委員会が熱心に地元の老人会や小学校に協力を呼び掛けてくれているため、予定の高年層調査に加えて小学校の親世代のあたる中年層世代にも方言調査が実現できている。昨年度までの水沢小学校や小山田小学校では、その成果を生かした継続的な授業が実施でき、地域の方々を招いて方言調査の結果報告会も開催した。今年度は四日市市立内部小学校の5年生全3クラスで、地域の方々にも参観してもらいながら、より発展的な3時間の授業が実施され、現場の先生方からも有益なアドバイスを受けた。以上の点より、当初の予定よりも多角的にまた量的に多くの研究とその成果を生かした教育実践が進められているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度までの方言調査とその成果を生かした教育実践を論文にまとめつつ、来年度の方言調査と教育実践の準備を進める。新たに四日市市立河原田小学校と河原田地区老人会への協力をお願いする。来年度10月中までには、遊びことばの調査結果に焦点を当てた論文を執筆する。来年度末までには、全ての方言調査とその成果を生かした小学校での教育実践について、科研費の報告書としてまとめる。.
|