Research Abstract |
本年度は,オーストラリアの価値教育を参考にして,日本の子どもたちの価値についてのイメージを明確にすることと,道徳教育用の読み物教材に含まれている価値内容を明確にすることを目的とした。また,道徳教育プログラム開発のための予備的な研究授業を行った。結果は以下の通りである。 1)小学4年生から中学3年生までの各学年,大学生,大人を対象に,価値のイメージについての調査を自由記述で行った結果,共通するイメージとして,家族,生命,友達,愛情,努力などがあげられることが明らかになった。これは今まで明らかにされていなかったことである。 2)道徳教育用の読み物教材に含まれる価値内容の分類を行った結果,小中学校に共通する価値内容として取り上げられているのは,自制,努力,生命尊重,礼儀正しさ,思いやり,友情・信頼,家族愛,学校愛の8個だということが明らかになった。共通する価値内容が8個であるのに対し,学校で教えられる内容項目は,学年が上がるにつれて15-23項目に増加する。そのため,教えるべき価値内容が充分浸透していないことが示唆された。1)の結果と合わせて見ると,生きる上で必要とされる価値内容と,学校で習う価値内容との相違が見られる。ここから,学校で習う価値内容の再構築が必要であることが明らかになった。これは道徳教育において新しい指摘である。 3)複数の価値内容を含んだ同じ教材による道徳授業を,小学校5・6年生,中学2年生を対象として行った結果,同じ教材でも学年によって学び取る価値内容が異なることがわかった。ここから年齢に応じた教材の開発が必要だということが明らかになった。 今後の課題として,子どもから大人までの価値についてのイメージを明らかにし,その年齢的変容に応じて価値内容を構造化すること,それに基づいて教材を開発し,道徳教育プログラムを作成することがあげられる。
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