2011 Fiscal Year Annual Research Report
学習障害児の算数障害の研究-数概念と分数概念の獲得について-
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22531057
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
熊谷 恵子 筑波大学, 人間系, 教授 (10272147)
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Keywords | 分数概念 / 分数計算 / 数学的志向性 / 数字への志向性 / 自閉的傾向 / 定型発達児 |
Research Abstract |
1.分数概念の獲得に関する継続調査の検討 小学校1年生から、分数の習得前の状態を含めて、分数の概念がどのように獲得されるかについて、昨年度末(2011年3月)に行った分数の習得度調査の集計を行った。東日本大地震の影響で、全校児童のデータを取ることができなかったが、全校児童の出席した約半数の児童1~6年生の分数の習得結果のデータが得られた。その中で、2mのひもを1/4,1/3,1/2に分割するという、分子が1ではない課題では、6年生でも、50.0%、42.5%、60.0%とこの問題の正答率のみが非常に低かった。このような点をふまえると、教科書の進め方などにも問題があるようにも思われた。さらに、個別の子どもたちの成績について検討していくことにしたい。 3月には継続して小学校における分数の習得度調査をA小学校1~6年生に行った。このデータ分析は平成24年度に行う。 2.発達障害の子どもに対する認知の特徴を考慮した算数数学の指導の効果の検討 中学生2名(それぞれ読み書き障害および算数障害がある)に対して、特に分数概念のつまずきを精査した。今年度は、発達障害のある児童・生徒が、どのような分数のつまずきがあるかを精査した。左右障害も合併している中1女子は、同分母の大小比較はできるが、異分母の大小比較となるとつまずいてしまった。 3.算数、数学が得意な子どもの中にも、自閉的な傾向があったり、発達障害のある子どもがいる。したがって、数字や数学的な志向性が高い人のことについても日本学術振興会の研究員である大泉と大学生の調査を行った。その結果、理工系の大学生は文化系の大学生より、数学的志向性が高いと同時に、自閉的な傾向度も一部高かったことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分数の習得に関しては、毎年継続的に調査が行えているため、貴重なデータが集まりつつある。今後、分析をどのようにしていくかという点と、学習障害をもっている子どもたちで支援を求めてきた子どもに対する分数指導の在り方を検討し、指導を試みていくという作業が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年3月に調査した結果をまず分析すること、また、算数・数学の困難さをもっている子どもに対する指導の方法について、行っていくことにする。今のところ、学習障害をもっている子どもたちで支援を求めてきた子どもの中で、分数概念の問題のある子どもは2名のみである。この2名は学習スタイルのタイプが似ているため、さらに増やしていきたいと考えているが、なかなか難しいとも言える。この点については、すぐに検討していきたい。
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