2010 Fiscal Year Annual Research Report
インクルーシブな聴覚障害児童のための協働学習モデルの構築に関する実践的研究
Project/Area Number |
22531066
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
鳥越 隆士 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10183881)
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Keywords | 聴覚障害児童 / インクルージョン / 協働学習 / 手話 |
Research Abstract |
本研究は,インクルーシブな学習環境(通常学級や難聴学級)にある聴覚障害児童のための協働学習モデル(通常学級での手話と音声言語の活用に配慮したチームティーチングによる指導)の構築と実践・評価を行うものである。本年度は,まず欧米諸国で実施しされている協働学習モデルに基づくプログラムの実践報告や調査報告をレビューし,プログラムの内容,配慮事項,成果や課題について整理を行った。さらに協働学習モデルを先駆的に実施しているイタリア・コサト小学校及び米国・マイルズ小学校でのフィールド調査を行い,授業の参与観察と教職員へのインタビューを通して,実践の現状や導入のための諸条件について検討を行った。上記の学級では,通常学級担当教員と聴覚障害専門の教員が共同で授業を行っていた。また聴生徒には手話学習の機会が設けられていた。聴覚障害専門の教員は,手話通訳を行ったり,聴覚障害児への取り出し指導を行うなどの役割を担っていたが,聴覚障害児のみを対象とするのでなく,通常学級担当教員とともに,学級全体への責任を担っていた。言語環境としては,常に音声言語と手話言語の両者にアクセスが可能なように配慮されていた。そのために教員以外に,手話通訳者が採用されていて,教員とともに協働作業がなされていた。学級活動では,一部の聴生徒は高度な手話能力が獲得され,グループ学習では,手話によるディスカッションや手話が不得手な聴生徒へ手話通訳を行っていた。ただ課題も見られた。高学年になるに従い,認知的な負荷の高い学習内容になると,聴生徒の手話使用が困難になる場面も多くみられた。また聴覚障害生徒の言語能力や認知能力の困難さにより,取り出し指導が増え,それが協働学習の機会を減少させている実態も明らかにされた。
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