2011 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症スペクトラム児者のための運動支援プログラムの開発と適用
Project/Area Number |
22531073
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
是枝 喜代治 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (70321594)
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Keywords | 知的障害 / 自閉症スペクトラム児者 / 運動支援プログラム |
Research Abstract |
本研究の目的は,自閉症スペクトラム(ASD)児者に共通して見られる運動面の不器用さや他者との関係性を含めた社会性の困難さなどに対応するため,集団活動に利用できる「運動支援プログラム(段階別)」を作成し,その効果を検証することにある。本研究は質問紙による調査研究,実験研究,プログラム適用に向けた実証研究という3つの内容から成り立っている。一つ目のASD児者の運動面の特性を探るためのアンケート調査に関しては,一昨年度実施したサンプリング調査の結果を参考に,群馬県及び埼玉県自閉症協会の協力を得て,現会員の方々を対象としたアンケート調査(運動発達や運動面の偏りに関する質問紙調査)を実施した。その結果,現在までに合わせて185名の会員の方からの回答が得られた。主な結果は,初期発達に関しては知的障害の水準(療育手帳の判定基準を参考)との弱い相関が見られたこと,粗大運動発達の経過は概ね健常児に類似した発達経過を辿るが,微細運動の発達に関しては,発達の偏り(個人差)が大きいことなどが知見として示された。二つ目の実験研究に関しては,前年度に引き続き重心動揺計(グラビコーダーGS-7:アニマ社製)を用いた実験を行った。重心動揺検査に関しては30秒間の直立姿勢保持に耐えられる力が必要となるため主として指示理解のできる参加者に限定されたが,学齢期のASD児を対象とした実験では,バランス機能の弱さが顕著に示された。限定したサンプルであるため,生理学的な問題が主として影響しているのか,注意の度合いなどが影響しているのかは明確に判別できてないが,今後,他の検査指標などを用いることでその要因を検証していきたい。 三つ目の運動支援プログラムの作成に関しては,主に学齢期を対象とした運動支援プログラムの素案を作成し,当初予定していた群馬県自閉症協会主催の「運動の集い」等の場を利用して,実地での検証に努めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査に関しては,今後,細かなデータ処理を行う段階に入っている。また,重心動揺検査を用いた実験研究でも,比較的軽度のASD児を対象とした実験が進められている。また,最終年度は現在作成中の「運動支援プログラム」の適用を行っていく予定であるため,当初の目的は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では,最終目的である段階別の運動支援プログラムの有効性の検証を検討していたが,知的障害を併せ持つASDの当事者(参加者)に対し,実際に参加したプログラムの有効性を判断してもらうことには,ある種の限界もあると考えられる。したがって,一緒に参加した保護者(参観する立場を含めて)や,第三者的な視点(支援者として関わった方へのアンケートなど(例えば,「普段の活動よりも積極的に参加していたか」「楽しんで参加する様子が見られたか」「年齢段階として効果的であったか」など))を交えながら,運動支援プログラムの有効性を検証していきたいと考える。
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