2011 Fiscal Year Annual Research Report
発達障がいを併せ有する聴覚障がい児の算術力向上を支援するAHS構築に関する研究
Project/Area Number |
22531074
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
松永 信介 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (60318871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 竹俊 東京工科大学, メディア学部, 教授 (10386766)
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Keywords | 発達障がい / 聴覚障がい / 算術力 / 算数 / 学習者特性 / AHS / 学習支援システム / eラーニング |
Research Abstract |
本研究は、近年の調査で明らかになってきた発達障がいを併せ有する聴覚障がい児に向けた、算術力育成のためのeラーニング教材を開発するとともに、その学習を支援するシステムの構築を目指すものである。 平成23年度に掲げた研究目的は大きく三つあった。第一は、前年度に開発したプロトタイプ教材・システムの改善である。これに関しては、アンケートやインタビュー等で浮かび上がった問題を解消するとともに、新たなニーズを仕様に反映することで大幅な改善を図った。第二は、数概念の基礎となる「計数」と「数唱」に関して、既存の学習理論に依拠したeラーニング教材を開発することである。前者の計数は、ケーキを題材としてGelmanの5原理を反映させる形で実際の教材開発を行った。一方、後者の数唱は、Fusonの5段階の発達モデルに基づく仕様設計を行った。この仕様は当初想定していたものとは異なるが、最終年度に新たに導入する、音に連動して振動する簡易USBセンサーの利用を意識している。そして第三は、AHSを機能させるためのコース設計と学習者モデルの設計である。コースに関しては、これまでの開発教材の関連性を整理し、多様な組合せのコース生成ができるようにした。一方、学習者モデルは新規参加者のプロファイルを追加する形で再編した。 また、これら三つの当初目的とは別に、現場の声を受けて新たなデバイスやシステムの導入の可能性についても模索した。先述したUSBセンサーもその一つであるが、その他に、電子黒板の活用やVR導入の余地についての研究を行った。電子黒板については、健常児を対象とした形での検討であったが、本研究が対象とする障がい児にも十分利用可能であることが確認された。一方、VRについては、実証実験の結果、モチベーション喚起などに有効であることが示唆されたが、低年齢の子どもには過度の没入感が悪影響を与えることも危惧されるため、その導入を見送ることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に掲げた目標の中で本質的に立ち遅れているのは、「数唱」に関する教材開発である。これは、当該年度の聴覚障がい児の聴力にかなり差があるということに起因する。ただ、これに関しては、当初の視覚依存の仕組みから、触覚の援用によりそれを補完する仕組みを導入するということで指針策定と基本設計まで済ませていており、最終年度において十分に補えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前項11で述べたように、「数唱」のリズム取りが新たな課題として上がってきた。重度の聴覚障がい児あるいは集中力のない発達障がい児には、視覚支援だけでは必ずしも十分ではなく、リズム感覚の醸成や集中力の持続を促すために振動型のマウスパッドやクッションを併用する仕組みを最終年度には導入する。これを、すでに実践展開している「計数」と足し算・引き算の計算に連動させる形で教材システムの完成をみる予定である。
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Research Products
(9 results)