Research Abstract |
平成23年度は,保育者用の待防止活動包括プログラムの効果を測定するために,これまでに行った聴き取り調査や文献研究からの概念モデルに基づき,2つの評価尺度を作成した。(1)関係機関・支援者の理解に関する要因や他機関協働役割に関する要因などを組み込んだ「保育者用児童虐待防止活動包括プロセスの役割遂行能力測定尺度」57項目。 (2)虐待防止プロセスの中でも特に保育所に苦情やクレームを呈するような困難事例への親対応に関わる領域を特化させた「問題処理技能に関する保育者の役割遂行能力評価尺度」47項目である。【調査研究】(1)と(2)の尺度が,概念モデルと適合しているかを確認し,その尺度で測定された保育士の役割遂行能力の実態を明らかにするために質問紙調査を実施した。調査対象は,九州圏内6県から無作為抽出した保育所300か所に対して,1保育所当たり5名計1,500名の保育士である。回収数は669名(回収率44.6%)だった。探索的因子分析の結果,(1)は,保育所役割の理解,関係機関・支援者の理解,虐待発見,通告の意義理解,通告行動,保育所内報告,管理者協議,個人通告,家族支援,他機関協働,保育所体制作りの11因子が,(2)は,予防,受容的態度,アセスメント,理解協力要請,謝罪,困難事例対応,事後管理,感情調整,組織対応の9因子が抽出され,両尺度とも概ねモデル通りの因子を確認できた。実態として,(1)では,関係機関・支援者の理解や単独通告の役割遂行能力の自己評価が,(2)では「困難事例対応」のそれが有意に低かった。【実践研究】虐待防止包括プログラムに関する実践研究を2回実施した。対象は実務者である保育士45名及び保育士志望学生96名である。プログラム前後で(1)の測定を実施し効果を検討したところ,すべてのプロセスにおいて自己評価が有意に向上した。しかし,「関係機関・支援者の理解」については他のプロセスよりも低い結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
児童虐待防止活動包括プログラム(1時間×15回相当)の効果を測定する評価尺度を作成したため,今後はプログラムの実践研究を行い,その効果検証に基づき,プログラムのコンテンツを吟味する必要がある。具体的には,保育者の虐待防止に係る実践力を効率よく教育するコンテンツの妥当化を図り,理解に資する概念図やワークシートなどの補助教材(道具)を開発していく。一方,保育実務者へこのプログラムを提供する場合,実施時間が限定されるため,研修目的や保育者の熟達度に応じて,数種類のプログラム短縮版を作成していく予定である。
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