2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 俊昭 京都大学, 工学研究科, 講師 (60291423)
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Keywords | 代数的組合せ論 / 量子代数 / 鏡映群 / Hopf代数 |
Research Abstract |
平成23年度の研究においては、affine Weyl群上の非可換微分構造の観点からaffine Grassmannian上のSchubertcalculusの研究を行った他、マトロイドから定まるある種の有限次元可換Gorenstein代数のLefschetz性や、情報セキュリティに関連して現れる離散距離空間上の組合せ構造の解析を扱った。まず、affine Weyl群上の非可換微分構造に関しては、affine Weyl群のルートデータから定まるようなYetter-Drinfeld加群を構成し、それに付随したNichols-Woronowicz代数の部分代数としてnil-Hecke代数が実現できることを示したが、そこでalcove pathに由来する情報が重要な役割を果たす点はクリスタル等との関係からも興味深いと思われる。今後、K理論的な一般化や可積分系の観点からの意味付けを与えることは重要な問題だと思われる。また、ハッシュ関数や擬似乱数生成器の安全性解析の数学的な取扱いに向けて、それらの問題を離散空間上の関数密度問題として定式化し、簡単なケースに対する解析を行った。ここで現れる離散空間上の組合せ構造は、幾つかの例においては有限体上の可換環論や符号理論、デザイン論等を通じて本研究課題と様々な関わりがあることが明らかとなった。マトロイドに付随した有限次元可換Gorenstein代数の研究においては、そのLefschetz性や有限幾何的な側面において新しい知見を得ることができた。この結果は、多項式のHessianに関するGordan-Noetherの理論の立場からも重要な例を与えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における研究実施計画では、affine Grassmannian上のシューベルト・カルキュラスに対しNichols-Woronowicz代数を用いた記述を与えることを主な目標として挙げていた。このテーマに関しては、nil-Hecke代数をNichols-Woronowicz代数の部分代数として構成し、さらに旗多様体上の量子コホモロジー環とのPeterson同型に対する解釈を与える結果を得ることができた。その結果は既に論文として出版されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における主要な研究テーマとしては、(1)非可換シューベルト・カルキュラス、(2)有限次元可換ゴレンシュタイン代数のレフシェッツ性、の2項目を挙げている。(1)に関しては、これまでの研究成果の発展としてK理論的なケースへの一般化を扱い、さらに可積分系との関係についてより詳細な理解を目指す。(2)については、マトロイドなどの組合せ構造との関係について新しい知見が得られつつあり、有限幾何的な視点も踏まえつつ研究を進める。本研究課題に関しては、情報セキュリティ数理などとの接点でも興味深い問題が見出された。こうした応用面も意識した研究の展開により、当初の計画以上の進展の可能性も見込まれるので、今後の主要テーマとして扱っていく予定である。
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Research Products
(2 results)