2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540035
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上野 喜三雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70160190)
|
Keywords | 多重ゼータ値 / 多重対数関数 / 形式的KZ方程式 / モジュライ空間 |
Research Abstract |
多重ゼータ値は多重対数関数の特殊値として与えられる.これは多重対数関数のテーラー展開(局所的性質)をみれば明らかであるが,このことより多重対数関数のモノドロミーあるいは接続関係式といった大域的性質から多重ゼータ値のみたす種々の関係式を導くことが可能となる.多重ゼータ値のみたす関係式の中で「二重シャッフル関係式」と呼ばれる関係式は基本的なものであるが,それを幾何学的に説明することが今回の研究の主テーマである. それはおおよそ次のように為される.モジュライ空間M_{0,5}上の形式的KZ方程式を考えよう.これはM_{0,5}上で定義された微分方程式であり,無限遠因子に対数的特異性を持つ.また,方程式の値はM_{0,5}の基本群のリー環\mathcal{X}に取るものとする.この方程式の可積分条件はリー環の基本関係に一致する.このKZ方程式の原点において正規化された基本解は,リー環の普遍展開環\mathcal{U}(\mathcal{X})に値をとる多価解析関数であり,一意的に定まる.そして,その展開係数に現れるのがM_{0,5}型の超対数関数であり,これは1変数多重対数関数を一般化になっている.さて,モジュライ空間M_{0,5}はM_{0,4}上の局所自明なファイバー空間であり,大域的切断を持つ.これより,M_{0,5}の基本群が底空間M_{0,4}の基本群とファイバーの基本群の半直積に分解し,このことから基本解が底空間方向とファイバー方向に自然に分解されることが分かる.さて,このファイバー空間の分解は二通り存在し,その結果,KZ方程式の基本解の分解も二通り存在する.この二つの分解を等置することにより,M_{0,5}型の超対数関数の間の関係式が得られるのだが,これが多重ゼータ値の調和積を導く.このようにして,「二重シャッフル関係式」がモジュライ空間の幾何学を通じて解釈された.
|
Research Products
(2 results)