2011 Fiscal Year Annual Research Report
組合せ論的可換代数への導来圏や位相幾何学的手法の応用
Project/Area Number |
22540057
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柳川 浩二 関西大学, システム理工学部, 准教授 (40283006)
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Keywords | 組合せ論的可換代数 / 離散モース理論 / Borel fixed ideal / 極小自由分解 |
Research Abstract |
今年度は、大阪大学大学院特任助教の岡崎亮太氏と共著で、以下の論文を執筆した。 [1]Alternative polarizations of Borel fixed ideals, Eliahou-Kervaire type resolution and discrete Morse theory,(arXiv:1111.6258)投稿中 22年度(以前)に執筆した論文で、出版が23年度にずれ込んだものも有るが、これらは次頁に記す。 代表者の昨年度の論文"Alternative polarizations of Borel fixed ideals"(Nagoya Math. Jに掲載決定)に於いて、Borel fixed ideal Iのalternative polarization b-pol(I)を導入したが、[1]ではその極小自由分解を記述している。Borel fixed ideal Iは,単項式イデアルのクラスの一つで、計算可換代数・組合せ論的可換代数で非常に重要であるが、b-pol(I)は、これを「特殊化」すると(パラメータの取り方に応じて)、I自身にも、そのsquarefree化I^σにもなるもので、従来の理論を大幅に組織化する。Borel fixed ideal I自身の極小自由分解は、EliahouとKervaireによって構成されており、この話題の研究の礎となっているが、その自由分解はb-pol(I)には持ち上がらず、工夫が必要であった。 なお、論文タイトルにもある通り、今回与えた自由分解は、Formanの離散モース理論と密接に関連する。2002年頃から、Welkerとその協力者たちは、単項式イデアル等の極小自由分解を、離散モース理論を用いて構成する(あるいは、極小自由分解に離散モース理論経由で、胞体構造を入れる)試みを行っている。本分野で注目を浴びた興味深い仕事ではあるが、計算が極めて煩雑で、微分写像まで具体的に記述できる例は殆ど無かったところ、今回構成したb-pol(I)の自由分解は、その具体例となっている。 [1]の完成後も幾つかの進展があり、現在は続編的な論文を進備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組合せ論的可換代数に、位相幾何学的手法を応用することが、研究目的の一つである。今年度は、(紛れも無く位相幾何学的な手法である)離散モース理論を応用し、非常に大きな進展が有った。その意味では(1)であるが、計画立案時に想定した「位相幾何学的手法」は、トーリック多様体論等がメインであり、研究の方向性は維持したまま、題材を一部変更したとも言える。これらを総合的に判断し、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、計画立案時に「位相幾何学的手法」の具体例として想定していた、トーリック多様体論ではなく、離散モース理論との関連に於いて、予想外のブレークスルーが有った。離散モース理論も、現在、位相幾何学で注目を浴びている話題の一つであり(実際、位相幾何学がメインの研究集会で、今回得られた結果について、2度口頭発表を行っている)、今後も現在の方向を推し進めて行きたい。 また、年度末にJ.Alvarez Montaner氏(カタルーニャ工科大)を訪ね、議論を行ったことで、単項式イデアルの"Lyubeznik表"に関して、新たな研究の端緒をつかんだので、こちらも進展させたい。なお、この話題の研究には、本課題のもう一つのテーマである導来圏が本質的に使われる。
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Research Products
(7 results)