2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540058
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
和久井 道久 関西大学, システム理工学部, 准教授 (60252574)
|
Keywords | 代数学 / トポロジー / 環論 / 表現論 / ホップ代数 / 結び目 |
Research Abstract |
代表者は、2010年に出版された論文において、ホップ代数の(表現圏の)組み紐構造を用いた、ホップ代数の表現圏のテンソル不変量を定義した。この不変量はホップ代数の基礎体を係数環とする多項式として与えられ、ある種のホップ代数については整数係数になり、また、表現環が同型であるような多くのホップ代数の表現圏を区別するなど、非常に興味深い性質を持っている。この研究では、多項式不変量のさまざまな「変種」を考察し、多角的に多項式不変量を調べることを目的としている。 上述の多項式不変量およびその変種を計算するためには、ホップ代数の絶対既約な表現をすべて求めて、それらの量子不変量を計算する必要がある。ホップ代数に対して絶対既約な表現をすべて求めることは一般に難しい。そこで、当該年度では、特別な表現からホップ代数の表現圏のテンソル不変量を見つけることができるかどうかを探った。特別な表現としてすぐに思いつくのが正則表現であるが、標準的な組み紐構造が存在する保証がないため、量子二重化のシュレディンガー表現を採用することにした。シュレディンガー表現を宮下-Ulbrich作用によって解釈し、量子二重化の表現圏がもとのホップ代数の表現圏の中心とテンソル圏同値になることを用いて、シュレディンガー表現のホップ絡み目次元がホップ代数の表現圏のテンソル不変量であることを示すことに成功した。 Bulacu氏とTorreciallas氏は量子二重化のシュレディンガー表現の組み紐次元が表現圏のテンソル不変量であることを示しているが、今回得られた結果は、彼らの結果の絡み目版といえる。特に、有限群Gの群ホップ代数の場合、シュレディンガー表現のホップ絡み目次元はGのすべての元にわたる中心化群の位数の総和に等しく、この量が圏論的意味を持つことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した実施計画のうち、最初の課題は解決することができたが、シュレディンガー表現のホップ絡み目次元とホップ絡み目の量子不変量を用いて定義される多項式不変量の変種との関連性や、Ng氏やSchauenburg氏により導入された高次元フロベニウス-シューア指標との関連性などは調べることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)当該年度に行った研究の続きとして、シュレディンガー表現のホップ絡み目次元の性質を調べるとともに、(2)ホップ代数の球面構造を用いた多項式不変量の変種を構成し、その性質を調べていきたい。(1)については、いくつかの具体例の計算結果から、標数0の体上で定義された半単純でないホップ代数に対し、その量子二重化のシュレディンガー表現のホップ絡み目次元は0になることが予想される。シュレディンガー表現のホップ絡み目次元を積分を使って計算する公式を作ることができれば、その理由が解明できると思われる。(2)については、Kac-Paljutkin代数やその一般化を含むホップ代数の系列について球面構造を決定し、球面構造を用いて定義される多項式不変量の変種と多項式不変量とを比較することから始めたい。
|