2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540060
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Research Institution | Shikoku Gakuin University |
Principal Investigator |
片長 敦子 信州大学, 全学教育機構, 講師 (20373128)
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Keywords | 特異点 / 単純K3特異点 / 超曲面孤立特異点 / K3曲面 / トポロジー |
Research Abstract |
原点で孤立特異点を持つ超曲面と原点を中心とした十分小さな球面との交わりは"特異点のリンク"と呼ばれ、特異点の構造を反映した多様体になっている。本研究では、代数幾何学の視点から現れた"単純K3特異点"の代数幾何学的・位相幾何学的構造の解明を目指している。単純K3特異点は、複素2次元特異点である単純楕円型特異点の3次元版と考えられ、豊かな数学的構造が期待できる。また、ある適当な特異点解消により、その例外集合として正規K 3曲面が現れることから、K 3曲面の構造が単純K3特異点に強く影響していると予想される。具体的には、定義多項式が"非退化"な場合と"退化"している場合において、1)特異点のリンクの微分同相型の決定2) 特異点のリンクの微分同相型とK 3曲面のNeron-Severi格子との関係解明を目指している。これまでの研究成果は以下の通りである。非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクの微分同相型は、Boyer、Galicki、Matzeuにより本研究方法とは全く異なる手法により決定されていることが判明したが、島田氏(広島大)の研究協力を得て、位相幾何学的・代数幾何学的証明を与える試みを続けている。斉次多項式で定義されている場合について証明できれば、擬斉次多項式で定義されている場合についても証明できたことになることがわかっており、いくつかの場合については特異点のトーリック解消を使って別証明が与えられた。また、非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして現れない実5次元多様体が存在することも判明した。その多様体とは、2次元球面と3次元球面の直積の2個の連結和の形をした多様体M_2と2次元球面と3次元球面の直積の17個の連結和の形をした多様体M_17である。これらの多様体を見つける試みを行い、M_17については候補となる定義多項式、すなわち特異点のリンクの2次元ホモロジー群のランクが17であるような単純K3特異点の定義多項式が見つかった。また、同様の方法がM_2では不可能であることも判明した。この研究は今後、K3曲面の性質と深く関連してくると予想されることから、とても重要であると考えている。
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Research Products
(2 results)