2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22540068
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
杉山 健一 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90206441)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 基本群 / 超幾何方程式 / 特性曲線 / Jones汎関数 |
Research Abstract |
本研究の目的は、3次元球面内に存在する結び目の補空間の基本群(以下結び目群と呼ぶ)と、その結び目に対して定義される色つきJones不変量との関係を明確にすることである。R を有理数を係数とするLaurent多項式f(q)から成る可換環とする。一般に、3次元多様体Xに含まれるリンクのアイソトピー類を基底として有理数体Q上定義された線型空間に、skein関係式を用いて、R上の加群の構造が入ることが判る。これを S(X) と表し、Xのskein加群と呼ぶ。YをXの3次元部分多様体とすると、S(Y)からS(X)への準同型が定まることが知られているので、3次元球面内の結び目Kの管状近傍をN(K)で表すと、S(N(K))から3次元球面のskein加群Rへの線型関数が得られる。これをJones汎関数と呼ぶことにする。Jones汎関数には非可換トーラスCが自然に作用するが、Jを消す元から成るCのイデアルI(K)とCuller-Shalen-Thurstonによる定義されたA曲線の定義イデアルを比較することが課題であった。A曲線は複素2次元空間内の代数曲線であるため、その定義イデアルは2変数多項式環に含まれる。一方I(K)は非可換環トーラスCに含まれるため、Cと2変数多項式環を関連付けなければならない。我々は有理数体上の群環Q[N](Nは自然数全体を表す)と一変数多項式環Q[q]が同型であることに着目し、CとQ[N]上の一変数微分環の間の同型を構成した。この結果に基づき、D加群の理論を用いてI(K)にfiltrationを入れることができるが、これについてのgraded商を取ることにより、Q[q]上の2変数多項式環に含まれるイデアルE(K)(いわゆる特性イデアル)が得られる。我々は、q=1としたとき、これはA曲線の定義イデアルに等しいと予想する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非可換トーラスCのパラメーターqを1すると2変数多項式環となるので、I(K)から2変数多項式環のイデアルが得られる。これがA曲線の定義イデアルに本質的に等しいであろうというのが、いわゆるAJ予想である。予想の本質は、I(K)から生じるイデアルがA曲線の定義イデアルに含まれることは容易に判るが、その差がどれだけあるのかが判然としないことにある。一方でN(Nは自然数全体を表す)からRへの写像には、非可換トーラスが自然に作用するが、それは微分環の作用と極めて似ている。そこで、これを微分環の作用として捉えることができれば、I(K)を微分加群と捉えることが可能になる。もしこの問題が解決されたとすると、D加群の理論で重要なBernstein理論、すなわち線型微分方程式の特性多様体の理論を用いて、I(K)からR上定義された代数曲線P(K)が得られる。この方法の利点は、次数付き加群の理論から、I(K)とP(K)の定義イデアルの関係がはっきりしていることである。以上の計画の遂行のためには、まず非可換トーラスと微分環との関係を明らかにした上で、I(K)を微分加群として捉えなければならない。我々は本年度の研究において、この課題をほぼ解決した。これにより、すでに説明した方法にしたがって、I(K)の特性曲線を定義することができる。この曲線はR上定義されているが、q=1とすることにより有理数体上の曲線を得る。これがA曲線にほぼ等しいのではないかと我々は予想するが、両者の関係の解明は今後の課題である。また本年度の研究により、A曲線をホロノミックな1変数の(有理数係数の)線型微分方程式の特性曲線として捉えることが可能になるのではないかと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに説明したように、Jones汎関数からD加群の理論を用いてR上の代数曲線がP(K)が得られる。今後の課題を、以下箇条書きの形で述べる。 (1)I(K)は微分環のイデアルと同一視されることが判ったので、I(K)から線型微分方程式が定まるが、我々はこれを決定するアルゴリズムを確立したい。またこのアルゴリズムを様々な結び目について実行し、どのような方程式が現れるかを調べる。 (2)(1)で求めた方程式はR上の方程式である。自然数の集合NからRへの写像に働く微分環を通常のQ上の微分環に変換するように、Q[N]から有理数体Qへの写像sを適切に選ぶ(まずこの写像sの決定が大きな課題である)。このsによりI(K)はQ上の微分環、すなわちワイル代数のイデアルに変換されるが、このイデアルが定める微分方程式を決定する。我々は、これは超幾何方程式であろうと予想する。 (3)(2)で説明した課題が肯定的に解決されたとする。(2)で述べたQ[N]からQへの写像sにより、Jones汎関数の像s(J) は超幾何関数となることが判る。この超幾何関数を決定する。 (4)R上の特性曲線P(K)から、q=1と置くことによりQ上の代数曲線が得られるが、これとA曲線の関係を明らかにする。我々は、この曲線はA曲線に自明な成分を除いて等しいと予想する。 (5)(3)と(4)で説明した課題が肯定的に解決されたとする。いまQ[N](=Q[q])からQへの特殊化写像として、q=1を代入する方法とsの二つがあることに注意されたい。(3)ではs(I(K))がワイル代数のあるイデアルとなることを主張し、他方(4)ではI(K)にq=1を代入したものが、本質的にA曲線の定義イデアルとなることを主張する。我々はこの二つの特殊化の関係を明確にすることにより二つのイデアルの関連を調べ、s(I(K))の特性曲線とA曲線の関係を明らかにしたい。
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