2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540086
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
勝田 篤 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (60183779)
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Keywords | 逆問題 / 安定性 / 境界距離 / グロモフハウドルフ距離 |
Research Abstract |
境界付リーマン多様体において境界の情報から内部の情報を得るという問題は、身体の表面の電磁気的情報から内部の情報や、地球内部の情報を地表での観測から推定する、工学製品の非破壊検査等のいわゆる逆問題の幾何学的モデルである。これまで多様体のノイマンラプラシアンの固有値と固有関数の境界値から多様体内部のリーマン計量を同定するというゲルファントのスペクトル逆問題について研究してきた。特に初めに与えられる情報が部分的で誤差を含む場合に多様体やリーマン計量のおおよその情報を得るという安定性の問題に対して考察してきた。Anderson, Kurylev, Lassas, Taylorとの共著で多様体のリッチ曲率、平均曲率のリプシッツノルム、直径、単射半径の有界性の条件下での結果が得られていた。今年度はそれから派生した問題である境界付多様体において内部の点から境界の点への距離関数(境界距離表現)から内部の点同士の距離を求めるという問題、特にその安定性と再構成アルゴリズムについて調べた。これまではリッチ曲率自身および平均曲率の1階微分のヘルダーノルムの仮定の下での結果(Kurylev, Lasssasと共著)とそれとは別に、断面曲率、主曲率の有界性の仮定の下での結果(昨年度)が得られていたにすぎないが、今回、リッチ曲率、平均曲率の下からの評価、および単射半径の下からの評価の下で結果が得られたと考えている。これでゲルファントの逆問題の安定性に関し、存在定理と同程度のクラスでの再構成アルゴリズムが得られたことになる。
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