2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540091
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
神山 靖彦 琉球大学, 理学部, 教授 (10244287)
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Keywords | ロボット運動 / 位相的複雑さ / クモの巣装置 / 正多面体 / モーメント角複体 / 商空間 / ホモロジー / ガウス・ボンネの定理 |
Research Abstract |
与えられたロボットの姿勢をどの程度連続的に変えることができるかを有効に記述する幾何学的量として位相的複雑さがある。この量は自然数に値を取るので非常に簡潔である反面、実際に計算することは極めて困難である。本研究課題ではロボットとしてクモの巣装置を考える。ここでクモの巣装置とは、正多角形または正多面体の頂点ごとにロボットアームを接合させて得られるロボットである。 クモの巣装置の重要性は以下の点にある。トーリックトポロジーという他の幾何学では、モーメント角複体という空間が盛んに研究されている。実はクモの巣装置の可能な姿勢全体は、モーメント角複体と同一視される。 1.本年度の主な研究成果は以下の通りである。位相的複雑さを決定するための重要なアプローチとして、空間の対称性に着目するというものがある。正多角形または正多面体の中心まわりの回転で、その図形を自分自身に重ね合わせるようなもの全体を正多面体群と呼ぶ。正多面体群はモーメント角複体へも作用するので、商空間が得られる。本年度は多角形の角数が12以下の場合について、ホモロジーを計算した。ここでホモロジーとは、位相的複雑さを計算する上で不可欠な量である。セル分割という非常に複雑な計算が必要であり、手計算では困難である。そこで、本年度の補助金でコンピュータ及びMathematicaという計算ソフトを購入して行った。 2.上記のコンピュータ計算には思わぬ副産物があった。微分幾何学で最も美しい定理であるガウス・ボンネの定理を考える。これは閉曲面のガウス曲率の積分が、オイラー標数と一致するという主張である。しかし、ガウス曲率の積分を直接計算することは難しく、球面とトーラス以外は未知である。プログラムを改良することにより、種数が小さい閉曲面の具体例に対してガウス曲率の積分を直接計算できた。これは計算機数学として興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」は位相的複雑さの決定である。そのための重要なアプローチとして、本年度の研究実施計画は商空間のホモロジーをコンピュータ計算することであった。本年度の補助金で購入したコンピュータを活用することにより研究成果に大きな進展があった。更に作成したプログラムを改良することにより、ガウス・ボンネの定理を検証するという副産物も得られた。 以上、本年度の研究実施計画は十分に達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
角数が小さい多角形に対応するモーメント角複体の商空間のホモロジーはコンピュータ計算により分かった。しかし、一般の角数のときには未解決である。これは手計算で行うしかない。まず具体例から規則を読み取り、次に一般の角数に対する理論を証明することになるであろう。 規則を読み取るところでは、研究集会に出席して関連する講演を聞くことも有効な方策である。 研究計画の変更や研究を遂行する上での問題点はない。
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