2011 Fiscal Year Annual Research Report
自明結び目のアーク表示をほどくためのクロムウェル変形の回数
Project/Area Number |
22540101
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
林 忠一郎 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281321)
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Keywords | 幾何学 / 結び目理論 / アーク表示 / クロムウェル変形 |
Research Abstract |
結び目のアーク表示とは、結び目を水車の各羽根と「軸に両端点を持つ1本のアーク(曲線分)」で交わるように配置したものである。2つのアーク表示が同じ結び目を表すとき、一方にクロムウェル変形を有限回適用してもう一方になる。クロムウェル変形にはエクススチェンジ、マージ、デヴァイドのa種類があり、このうちデヴァイドのみがアークの本数を増やす。エクスチェンジは本数を変えず、マージは本数を減らす。自明結び目をほどく変形はデヴァイドを使わず、エクスチェンジとマージのみで済むことをディニコフは示した。必要な最小変形回数がアークの本数nの次数の大きな多項式になる具体例の無限列を与えることが本研究の目的である。 昨年度はマージ変形するまでに何回のエクスチェンジ変形が必要であるかを計算するMathematica上で動くプログラムを開発した。その結果、アークが9本の場合は4回が最大であることが分かった。アークが10本の場合は4回、11本では5回、12本では6回エクスチェンジ変形が必要な具体例を見出した。ただし、10本以上の場合は、全ての具体例を調べ尽くすことは困難であったので、アーク表示の「複雑さ」を定義して、ある程度複雑さの大きい範囲のみを調べたので、これが最大値ではない。しかし、「複雑さ-1」はマージするまでに必要なエクスチェンジ変形の下限を与えるので、複雑さの大きい範囲で自明結び目のアーク表示を見つければ、マージするまでにエクスチェンジが多く必要なアーク表示が見つかったことになる。 マージするまでにnの1次式回以上のエクスチェンジ変形が必要と思われる具体例を構成できたが、まだ証明できていない。なお、この例の複雑さは低い。また、一般に「複雑さ」はアークの本数nの1次式までしか大きくなれない。よって、2次式回以上のエクスチェンジが必要な具体例があったとしても、そのことの証明には使えない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マージするまでにエクスチェンジ変形がアーク数nの1次式回必要な具体例の無限列を昨年度までに見つけ、それを証明する予定だったが、まだ実現されていない。したがって、研究はやや遅れている。しかしながら、まだ証明できてはいないものの、マージまでに1次式回必要な具体例の無限列を構成できたと考えている。今のところ、アークの本数が小さいところで、それらしい回数が必要なことをコンピュータを用いて確認しているが、無限個を考えないと1次式になっていると断言はできない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の具体例の無限列に対して、マージするまでにエクスチェンジ変形が本当にアーク数nの1次式回必要であることを証明する。そのために、一般のアーク表示に対して、マージできるようになるまでのエクスチェンジ変形全てを網羅するソフトウェアを開発し、それを用いてエクスチェンジ変形の効果をよく観察したい。証明が難しいようだったら、別の例を探す。もしも、具体例を替えてもうまく証明方法できない場合は、複雑さが大きいところの観察を再開し、そこで自明結び目のアーク表示を見つける。実は、マージするまでにnの2次式回のエクスチェンジ変形が必要な具体例を構成できると期待する或る構想を持っているが、アークの本数がかなり多く、コンピュータ実験するにも、プログラムをかなり高速化しなければならない。それも今年度の課題である。
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