Research Abstract |
本研究の主目標の1つである,任意の閉集合上の任意の局所有限1の分解が全体空間に拡張可能であるようなDowker空間の存在を問うT.C.Przymusinskiの問題について研究を進めた。その研究過程においてアイデアを得て,応用として,独立部分基底の存在に関するH.Tsuiki (2004)の問題を最も一般的な形で解決する次の定理を証明した。定理1.位相空間がその位相を導く独立部分基底を持つためには,自己稠密,可分距離化可能であることが必要十分である。定理2.位相空間が次元nの独立部分基底を持つためには,自己稠密,可分距離化可能で被覆次元がn以下であることが必要十分である。独立部分基底の概念は,グレイコードによる位相空間の表現を目的として導入された概念である。これまでに,実数空間,カントル集合,閉区間,有限立方体,Hilbert立方体,円周や球面,n次元トーラスなど,具体的な自己稠密,可分距離空間上には,通常の位相を導く独立部分基底を定義できることは知られていた。上述の定理は,独立部分基底を持つ位相空間のクラスを決定するものである。 Z.BaloghによるDowker空間の構造の解析を進めた。Dowker空間とは,単位閉区間との直積空間が正規でない正規空間のことである。最小の非可算濃度を持っDowker空間や,可分性や第1可算公理などを満たす小さなDowker空間の存在を証明することは,位相空間論における主要問題の1つである。本研究では,依岡輝幸氏(静岡大・理)と共同で,Balogh型の空間で,その平方が継承的正規となる空間を構成するための自然で強力な手法を開発した。本手法で構成された正規空間がDowker空間であるかどうかの検証を進めているところであるが,未だ証明は完成に至っていない。なお,Z.BaloghによるDowker空間の構成とelementary submodelに関する解説をホーム・ページ(本報告書末尾)で公開中である。
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