2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540135
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐々木 徹 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20260664)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 応用数学 / 関数方程式論 / 感染症 / 疫学 |
Research Abstract |
遅れのない方程式系のリアプノフ関数を用いて, 遅れのある方程式系のリアプノフ汎関数を構成する方法は,昨年度論文が出版された (Kajiwara and Sasaki 2012) が,そこで述べた方法の応用について研究を行なった.ここでは,感染可能者,潜伏期にある者,感染者を変数とする SEIR モデルにおいて,それぞれを n 個のグループに分けるモデルを考えている.また,インシデンス関数は (増大度などに条件を付けた) 一般的な関数に拡張したものを扱っている. このモデルに時間遅れを入れたモデルに対して,リアプノフ汎関数を構成することに成功した.これは,Guo et.al. (2006) や Li and Shuai (2010) が遅れのない方程式系に対して得た結果に,上述の我々の結果の方法を適用し,更に Huang and Takeuchi (2011) で述べられている手法を用いる事によって得られたものである. 現在は,この結果を論文にまとめるために,先行研究を確認し,我々の結果を整理する作業をしているところである. リアプノフ関数が知られている (遅れの無い) 常微分方程式系に対して, 更に未知変数 を増やした (遅れの無い) 常微分方程式系のリアプノフ関数を構築する方法については,体内のウイルスダイナミクスを記述するモデルにおいて,インシデンス関数を一般化したモデルやウイルスの吸収効果を取り入れたモデルについて,ある程度の結果を得た.これについては,上述の論文制作が済んだら,研究を進め論文出版に向けて作業をする予定である. また,変数分離の方法によるリアプノフ関数の構成法を体系的に考察しているが,これに関しては,1 捕食者・1 被食者系ではあるが,かなり一般的な形の方程式に対しても変数分離の方法が適用出来る事が分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数グループからなる SEIR 感染伝播モデルに遅れを入れた場合のリアプノフ汎函数の構成に関しては,「研究実績の概要」で述べたように,論文にまとめる段階まで進んでいる. 拡散効果を取り入れたモデルに関しては,時間が足りなかった関係であまり研究を進めることが出来なかったが,リアプノフ関数が知られている (遅れの無い) 常微分方程式系に対して, 更に未知変数 を増やした (遅れの無い) 常微分方程式系のリアプノフ関数を構築する方法については,これも「研究実績の概要」で述べた通りある程度進んでいて,あと少しで論文の形にまとめるまでに出来る見通しである.また,変数分離の方法によるリアプノフ関数の構成法を体系的に考察しているが,これに関しては,1 捕食者・1 被食者系ではあるが,かなり一般的な形の方程式に対しても変数分離の方法が適用出来る事が分かったので,更に他のモデルへの適用が期待できる. また,上述の未知変数を増やした常微分方程式系に対する リアプノフ関数の構成法と組み合わせるなどにより,より複雑なモデルへの適用などの発展が可能ではないかと考えている. 以上の観点から, 現在まではおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
感染可能者,潜伏期にある者,感染者を変数とする SEIR モデルにおいて,それぞれを n 個のグループに分けるモデル (インシデンス関数は適切な条件の下の一般的な関数) に時間遅れを入れたモデルに対して,リアプノフ汎関数を構成することに成功したので,これに関して整理をして論文を完成させる.次に,リアプノフ関数が知られている (遅れの無い) 常微分方程式系に対して, 更に未知変数 を増やした (遅れの無い) 常微分方程式系のリアプノフ関数を構築する方法に関して,昨年度得た結果 (インシデンス関数を一般化したモデル,ウイルスの吸収効果を取り入れたモデルに対するリアプノフ関数の構成) を補強し論文としてまとめる予定である.その後は,拡散効果を取り入れたモデルの研究やリアプノフ関数の構成法に関する研究を並行して行なうつもりである.拡散効果を取り入れたモデルでは,コンパートメント間の拡散を記述する常微分方程式モデルに対して数理的な解析を行なうとともに,個体ベースモデルによるシミュレーションを偏微分方程式モデルの数値解と比較して考察を行なう.また, コンパートメント間の拡散と空間連続分布の拡散の比較も行なう予定である.リアプノフ関数の構成法に関する研究では,変数分離の方法に関して今までに得られた結果を拡張し,更に上述の,未知変数を増やしたモデルに対するリアプノフ関数の構成方法と組み合わせることにより,種々のモデルに対してリアプノフ関数の構築を試み,その有効性を考察する研究も進めたいと考えている.
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Research Products
(3 results)